しじま

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11/2/2023, 6:21:26 PM

明日は、何をしようか。

フカフカと暖かいベッドの中、目を閉じて考える。

君と一緒に何処かへ行こうか、それとも家でノンビリ過ごそうか。

たまには気分転換に神社へ行くのも良いかもしれない、その後は近くの本屋や日替わりの店を覗くのも悪くはないな。

あんまり家でゴロゴロしてたら、あっという間にブクブク太って、君に嫌われてしまうかもしれないし。

何処に行こうか。 君は何処に行きたい?

真っ暗闇の中、いつものスーツを着込んだ君の姿が浮かんで、思わず笑みが溢れる。

差し出された君の手を取って、面白可笑しい夢の中。

君と一緒に旅をする。

テーマ「眠りにつく前に」

11/2/2023, 4:22:48 AM

 仕事帰りに頻繁に買食いをしていたツケが回ってきたようだ。

三つ揃えのベストのボタンが嵌まらない。

あともうちょっと、と頑張るがやっぱり嵌まらない。

洗面所の鏡の前、頑張らせ過ぎて緩んでしまったベストのボタンを見て、思わず溜め息が出る。

 自分ももう若くない、そろそろ自分が生まれた時の父親の年齢になる頃だ。

自分が生まれた時、父の腹は既に立派なビール腹で少し動くたびにタユンと揺れていたのを覚えている。

……あれはイヤだ、あれだけは絶対に、あれだけは!!

 もう買食いはしない、帰りは一駅手前で電車を降りて歩いて帰ろう、と軟い腹を撫で擦りながら決意した。

テーマ「永遠に」

10/31/2023, 5:03:57 PM

蛇口を捻れば、そのまま飲むことのできる綺麗な水が出てくる。

スイッチ一つで、ちょうど良い温度の湯が沸き、楽々と飯が炊ける。

学校に通い、様々な物事を学ぶ機会が与えられている。

ケガや病気の時には、誰でも病院に行って医者に診てもらえる。

自由に恋愛をして、結婚して子供をもつことができる。


これが『あたりまえ』になったら、きっと不幸だ。

テーマ「理想郷」

10/30/2023, 5:41:00 PM

人は忘れてしまう生き物だから。

君の顔も名前も、もう思い出せない。

夢の中の君は何度も僕を呼んでくれるのに、僕は君の名前を呼んであげることすら出来ない。

君の怒った顔も、泣き顔も、膨れ面も、寝顔も、笑顔も、全部、全部見ていた筈なのに。

もう何も思い出せない。

もうこれ以上、忘れたくないよ。

こんなふうに想うほど愛していた君のことを。

テーマ「懐かしく思うこと」

10/29/2023, 5:28:16 PM

 遠い昔に君達と巡った世界を、再び私は歩いていた。

あてのない旅、自由気ままなひとり旅だ。

 あの頃とは違い、キレイに整備された街道。

魔物も盗賊も居ないのは少しだけ寂しく感じるが、これも時代の流れだろう。

 魔王を倒して訪れた束の間の平和の後。

共通の敵を失った人類は、国家間で戦争を始めた。

 大地は割け、空が燃え、雄大な山々は木っ端微塵に吹き飛ばされた。

 何年も続いた戦争は、疫病と大飢饉によって終わりを迎えた。

今や人類は絶滅寸前の種族となり、何処かの山奥に隠れ住んでいるらしく、滅多に見ることはない。

私はそれを嬉しく思った、もう私を恨めしげに睨みつけてくる奴等が居なくなったのだから。

 ひんやりと気持ち良い風が背に生えた翼や尾を掠めていく。

嗚呼……、君にもこんなふうに擽られたことがあったな。

君達との懐かしい記憶を思い出しながら、今日もひとり、旅をする。

テーマ「もう一つの物語」

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