遠い昔に君達と巡った世界を、再び私は歩いていた。
あてのない旅、自由気ままなひとり旅だ。
あの頃とは違い、キレイに整備された街道。
魔物も盗賊も居ないのは少しだけ寂しく感じるが、これも時代の流れだろう。
魔王を倒して訪れた束の間の平和の後。
共通の敵を失った人類は、国家間で戦争を始めた。
大地は割け、空が燃え、雄大な山々は木っ端微塵に吹き飛ばされた。
何年も続いた戦争は、疫病と大飢饉によって終わりを迎えた。
今や人類は絶滅寸前の種族となり、何処かの山奥に隠れ住んでいるらしく、滅多に見ることはない。
私はそれを嬉しく思った、もう私を恨めしげに睨みつけてくる奴等が居なくなったのだから。
ひんやりと気持ち良い風が背に生えた翼や尾を掠めていく。
嗚呼……、君にもこんなふうに擽られたことがあったな。
君達との懐かしい記憶を思い出しながら、今日もひとり、旅をする。
テーマ「もう一つの物語」
10/29/2023, 5:28:16 PM