小学一年生の秋に、通っていた学校で焼き芋パーティをした。
校庭に積もった落ち葉をPTAの役員や保護者と総出でポリ袋に詰めて、校庭のど真ん中に山のように積んで。
皆でカウントダウンをして着火、四階建ての校舎と同じくらいの高さの火柱が上がり、黄色い煙がモクモク。
時折、パァンッと破裂音が響いていた。
バチバチと音をたてて舞い上がる火の粉が綺麗で、煙にやられて顔面をグショグショにさせながら友達と一緒に「すごい、すごい」とはしゃいだのを覚えている。
少しトロっとした甘くてホクホクの焼き芋。
燃える落ち葉の臭い、炭化してカサカサ音のする新聞紙。
今や名前すら覚えていない、あの日一緒に芋を頬張ったあの子の笑顔。
きっと、ずっと覚えているんだろうな。
テーマ「忘れたくても忘れられない」
小春日和の今日この頃、君と並んで近所を散歩。
デスクワークで運動不足気味の君と、夏も変わらず食欲旺盛でモリッと体重増加した私。
大きく腕を振って大股でスタスタ速歩き、足が長い君に少しずつ置いていかれてしまう。
軽く息を弾ませるだけの君とゼェハァと息切れして立ち止まる私。……どこが運動不足なのかな。
ハア、と大きく吸って吐いて、息を整える。
汗でビチョビチョになった背中を不快に感じながら、遥か先を歩く君に向かって駆けていく。
テーマ「やわらかな光」
友達から貰った有名なテーマパークのマスコットキャラのぬいぐるみ。
特に好きではないけれど、友達が買ってきてくれたお土産だ。
即クローゼット行きは可哀想だと思い、本棚の空いているスペースに飾ることにした。
見開かれたハイライトのない黒い瞳と目があったような気がして、気味が悪い。
こんなのが大人気だなんて、と苦笑しつつ畳んだテーマパークの袋を仕舞ってから自室を出た。
バイトから帰宅して家族と晩御飯を食べ、入浴を済ませて自室に入ると、あのぬいぐるみが床に転がっていた。
ギチギチに詰めたはずなのに、と不思議に思いながら元の位置にぬいぐるみを戻してから、本棚にキッチリ収まっているぬいぐるみを監視するためにベッドに寝っ転がる。暇人。
いつの間にか寝ていたようだ、ぬいぐるみはまだギチギチしている。
やっぱり気のせいか、と欠伸を一つ、再び寝る為に目を閉じた。
バタバタッ、と大きな物音がすぐ側で鳴り、驚いて目を覚ます。
本棚の下に真っ黒い大きな塊がウネウネと蠢いていた。
幽霊かっ、と思わずバッと身を起こすと黄色く光る二つの目。
にゃーん。
可愛らしい鳴き声一つ、ぬいぐるみの横にコロンと寝転んで飯の催促をする大きな黒猫。
なんだ、おまえだったのか。
テーマ「鋭い眼差し」
台風並みの風に吹っ飛ばされてく羊雲と木の葉の合間。
青空をバックに若いカラスが「おわあああっ」と鳴きながら、転がっていった。
テーマ「高く高く」
季節外れの心霊番組を興味本位で見た君に、深夜、トイレについてきて欲しいと起こされるなんて思いもしなかった。
なんの変哲もない自宅のトイレを怖がるなんて、と思いながらドアの横に座り込んで、くあっと大きく欠伸する。
時折聞こえてくる君の声に生返事しながら、眠い目を擦りつつ待っている内に、自分も催してきた。
早く出てこないかなあ、と思っているとカチャリとトイレのドアが開いて君が出てきたので、入れ代わるようにトイレに入って用を足す。
ザパー、と水の流れる音を聞きながら手を洗って出てくると君の姿は無かった。
先に寝室に戻ったのかな。
自分で頼んでおきながら薄情な奴だ、と少々イラっとしながらベッドに戻って再び寝た。
朝一番にそのことを言うと、キョトンとした顔で首を傾げる君。
夜中にトイレになんか行ってないよ?
テーマ「子供のように」