かくれんぼ、おにごっこ、たかおに、かんけり……。
思えば子供の頃は遊んでばかりだったなあ、とコーヒーを飲みながら思い出し笑いをしていると、洗い物を終えてテーブルの向かいに座った君が手を拭きながら、怪訝そうに私を見ていた。
物静かな君は子供の頃、どんな遊びをしていたのかな。
案外、女子達とママゴトとかをしていそうだ、と思いながら君に聞いてみると、少しだけ不機嫌そうな顔で私を睨んで。
さり気なく目線を目の前に置かれたコーヒーに移して、角砂糖を六つ、黒い液に落としてから優雅な所作でコーヒーを一口二口飲む君。
暫しの沈黙、かちゃりとカップをソーサーに置いて一言。
黙秘権を行使します。
……それから、ままごとは絶対に、してませんからね。
そう言って笑う君の笑顔が少しだけ怖かった。
テーマ「放課後」
生まれる前から全否定されてきたので、今更どうにかしようなんて考えてなんかいない。
楽しいだとか、嬉しいだとか、そんなものはいらない。
美味しいものが食べたい。
ブランド物の服やアクセサリーが欲しい。
そんな汚らわしい欲も必要ない。
地位も、名誉も、金も、何もかも、どうでもいい。
無感動にこの場に居るだけ。
このくだらない世界が終わるまで。
テーマ「カーテン」
月がとても綺麗だから。
ずっと昔に居なくなってしまった君のことを思い出す。
月の光のような美しい銀の髪を靡かせて、ふわりと微笑む君。
愛しい人。
ずっと一緒にいられると信じていたのに。
ある日突然、君は居なくなってしまった。
愛しい人、今は何処で、何をしているのだろうか。
月がとても綺麗な夜に、私ひとり。
君のことを思いながら目蓋を閉じる。
テーマ「涙の理由」
どこもかしこも極小住宅に変わってしまって、大きな庭のある家や凝った植栽のある住宅が無くなってしまった。
面白みのない家々、外に飛び出したムダにツルピカな車の反射がウザい。
これからも住居の極小化が進むのだろうか?
今作られた極小住宅を更に何分割かして家を建てて、またその家を更に分割して、また分割して、さらに分割していったら……。
棺桶サイズの家が出来てしまうのでは?!
なんて、バカなことを考えながら、君の待つ家へと帰る。
テーマ「ココロオドル」
モゾモゾと腕の中で君が動く気配がして、反射的に腕に力を込めた。
「ぐふぅ」と何やら苦しげに息を吐きながら起きた君に、気づかれないように笑う。
腕の中から出ようとモゾモゾモゾモゾ、しばらく動いていたが諦めたのか動かなくなった君。
すぴすぴ、と寝息をたてる君の幸せそうな寝顔に癒やされながら、私もまた目蓋を閉じるのだった。
テーマ「束の間の休息」