リングの上で馬鹿でかいアナコンダに全身を締め上げられる。
メキメキと鳴る背骨、生温かいアナコンダの身を必死でタップ。
「ぐえぇ」という自分のうめき声にハッと目を開けた。
カンカンカンッという音が聞こえたような気がしたが、どうやら夢だったようだ。
よかった、寝起きのぼんやりした頭でそう思いながら起き上がろうとして。
背後から回されていた君の両腕に起床を阻まれた。
……さて、もう一眠りするかな。
テーマ「力を込めて」
みんな、居なくなればいい。
毎日毎日、祈っていたら神様が願いを叶えてくれたようだ。
朝、起きたら一人だった。
父も母も、妹も居ない。
二階の自分の部屋の窓から外を見た。
いつもなら誰かしら歩いている道には人っ子一人居ない、うるさいカラスの鳴き声すら聞こえてこない。
みんな、居なくなった。
やったあ、と今まで出したこともない大きな声で叫んでいた。
それからは楽しい毎日だった。
朝から晩までゲームをして、大好きな漫画や小説を読んで、大声で歌を歌った。
家々の窓ガラスを叩き割り、アパートに火を着けて燃やしてみたり、金持ちの家の庭の池に入浴剤をぶち込んで真っ黄色にもしてみた。
あ〜愉快愉快、さあ、次は何して――。
ブチン、と音がして私が消えた。
姉の脳腫瘍が見つかった時には、既に手遅れだった。
意味のない延命をするくらいなら、と姉は安楽死を望んだが、父も母も反対した。
どんな姿でも良いから生きていてほしい、そう言って。
その日から姉は変わってしまった、おっとりと優しかった姉が父や母を罵倒するようになった。
安楽死に賛成してれば良かった、なんて父も母も言い出すようになった。
治る見込みもなく、身体が動かせなくなり自分で死ぬことも出来なくなった姉は、掠れた声さえ出なくなった口を死の間際まで動かし続けていた。
みんな、いなくなれ。
わたしよりも、くるしんで、苦しみ抜いて。
死ね。 、と。
テーマ「過ぎた日を想う」
暗闇の中、頭上高くに散りばめられ流れていく星を眺める。
珍しく重なった休みの日、ストレス発散!と、朝早くから二人で遊び回った。
普段は食べないジャンクフードをお行儀悪く歩きながら食べてボウリングにカラオケ、ゲームセンターでお揃いのヌイグルミを取った。
フードトラックでランチボックスを買って、公園の芝生の上で食べながら他愛もない話をして君と笑いあう。
午後は買い物、本に雑貨に服と二人分、結構な量の荷物を駅前のロッカーに入れて。
今は、ソファに並んで腰掛けてプラネタリウム鑑賞中。
映し出された満天の星空に、隣で目を輝かせているだろう君を見やる。
テーマ「星座」
遠い遠い未来の何処かで、また君に出会うだろう。
声も、顔も、性別も、今と全く姿形が違っていても。
きっとまた、私は君に惹かれる。
何度も何度も生まれ変わろうが、きっと。
私は君のことを愛しつづけるでしょう。
テーマ「巡り会えたら」
栗の季節なので、君の大好物のモンブランを作ろうと思う。
私も好きなので少し多めに。
しっとりフワフワの薄めに焼いたジェノワーズ生地に、砕いた蒸し栗入りの生クリームを均一に塗る。
下に敷いたシートを利用しクルリと巻いて、戻らないようにテープで固定、残った生クリームと一緒に冷蔵庫に入れた。
モンブランのモンブラン的なあれ、……マロンクリームを作る。
栗の味を楽しみたいからバニラは無し砂糖は控え目、それで十分、栗の優しい甘みと香りが口いっぱいに広がっていく。
しっかりと裏漉しして、絞り袋に入れてから冷蔵庫で冷やす。
上にのせる栗は流石に市販品、ブランデーの効いたマロングラッセを買っておいた。
早く帰ってこないかな、とキッチンで湯を沸かしながらマロングラッセをパクりと口に入れた。
テーマ「奇跡をもう一度」