自粛期間中に何故か流行ったあの歌。
リビングのソファに座り、パソコンとにらめっこしている君の目の前で、何とはなしにハミングしてみる。
すぐに君は「懐かしいな」とクスクス笑いながら鼻歌を歌い出す。
アナログ時計の秒針の音をメトロノーム替わりに、ハミングと鼻歌で上手い具合にハモってみたりして。
あの散々な日々を今、こうやって二人で笑いあうことが出来る幸せを噛み締めながら、サビに突入。
キャッチーな最後のあのフレーズはユニゾンして、歌い終わった後で二人してカラカラと笑った。
ホントなんで流行ったんだ、あの曲、と。
テーマ「香水」
ほんの一瞬のアイコンタクト。
俺達にはそれだけで充分。
別々の物陰から二人揃って躍り出ると、街中で刃物を振り回していた男が怯んだ。
一瞬の隙き、俺もアイツも逃がすなんてヘマはしない。
アイツが刃物を握る男の手を蹴り上げる。
宙を舞う刃物をカッコよく掴み取ったアイツが遠くへ投げ捨てた。
俺は男に足払いをかけて倒し、そのまま腕を捻りあげて、痛い痛いと喚く男の頭を叩く。
自業自得だ、と。
ギチギチに縛りあげた男を道に転がして、残り少ないランチタイムに二人して戻る。
フードトラックのホットドッグにかじりついて英気を養う、午後も仕事で今夜もきっと残業だ。
目と目で通じ合う、そんな歌があったっけな。
俺達はそういう間柄ってこと。
なっ、相棒。……え、違う?
テーマ「言葉はいらない、ただ・・・」
テーブルにノートを広げると、首輪の鈴をシャリシャリと弾ませながら君がやってくる。
長い毛の生えた尻尾をクネクネ、今日もご機嫌な君。
トテン、とテーブルに飛び乗るとまっさらなノートの上に寝そべった。
だらーん、と身を伸ばしながら黄色い目を細めて僕を見つめる君。
宿題そっちのけで今日も僕は、君を吸う。
……ふぅ。 猫吸い、サイコー。
テーマ「突然の君の訪問。」
ねえ、かえろうよ。
冷雨に濡れる君の背に向けて掛けた言葉は、雨音に掻き消されて届かず。
かぜ、ひいちゃうから。
君は動かない、濡れそぼったシャツの袖から伸びた腕は青白く微かに震えていた。
もう、かえろうよ。
すり抜けてしまう自分の両腕で、冷たい君の身体を抱きしめる。
冷たくなってしまった君の心と身体を、少しでも温めることが出来たら、と思いながら。
かえろう。
この冷たい墓石の下に自分は居ないのだと、目の前の君に伝えることが出来たなら、どんなに幸いだろうか。
テーマ「雨に佇む」
辛いことも、悲しいことも、楽しかったことも、嬉しかったことも、全て。
私というモノの奥深くに、大切にしまってある。
私という存在を形成する、かけがえのない記録。
命を終えるその時まで、手放す気はない。
たとえ、この世界がシミュレーションだとしても。
テーマ「私の日記帳」