しじま

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8/30/2023, 4:20:14 PM

 自粛期間中に何故か流行ったあの歌。

リビングのソファに座り、パソコンとにらめっこしている君の目の前で、何とはなしにハミングしてみる。

すぐに君は「懐かしいな」とクスクス笑いながら鼻歌を歌い出す。

アナログ時計の秒針の音をメトロノーム替わりに、ハミングと鼻歌で上手い具合にハモってみたりして。

あの散々な日々を今、こうやって二人で笑いあうことが出来る幸せを噛み締めながら、サビに突入。

キャッチーな最後のあのフレーズはユニゾンして、歌い終わった後で二人してカラカラと笑った。

ホントなんで流行ったんだ、あの曲、と。

テーマ「香水」

8/29/2023, 1:27:55 PM

 ほんの一瞬のアイコンタクト。

俺達にはそれだけで充分。

 別々の物陰から二人揃って躍り出ると、街中で刃物を振り回していた男が怯んだ。

一瞬の隙き、俺もアイツも逃がすなんてヘマはしない。

 アイツが刃物を握る男の手を蹴り上げる。

宙を舞う刃物をカッコよく掴み取ったアイツが遠くへ投げ捨てた。

俺は男に足払いをかけて倒し、そのまま腕を捻りあげて、痛い痛いと喚く男の頭を叩く。

自業自得だ、と。

 ギチギチに縛りあげた男を道に転がして、残り少ないランチタイムに二人して戻る。

 フードトラックのホットドッグにかじりついて英気を養う、午後も仕事で今夜もきっと残業だ。


 目と目で通じ合う、そんな歌があったっけな。

俺達はそういう間柄ってこと。

なっ、相棒。……え、違う?

テーマ「言葉はいらない、ただ・・・」

8/29/2023, 8:01:24 AM

 テーブルにノートを広げると、首輪の鈴をシャリシャリと弾ませながら君がやってくる。

長い毛の生えた尻尾をクネクネ、今日もご機嫌な君。

トテン、とテーブルに飛び乗るとまっさらなノートの上に寝そべった。

だらーん、と身を伸ばしながら黄色い目を細めて僕を見つめる君。

宿題そっちのけで今日も僕は、君を吸う。

……ふぅ。 猫吸い、サイコー。

テーマ「突然の君の訪問。」

8/28/2023, 4:15:02 AM

 ねえ、かえろうよ。

冷雨に濡れる君の背に向けて掛けた言葉は、雨音に掻き消されて届かず。

 かぜ、ひいちゃうから。

君は動かない、濡れそぼったシャツの袖から伸びた腕は青白く微かに震えていた。

 もう、かえろうよ。

すり抜けてしまう自分の両腕で、冷たい君の身体を抱きしめる。
冷たくなってしまった君の心と身体を、少しでも温めることが出来たら、と思いながら。

 かえろう。

この冷たい墓石の下に自分は居ないのだと、目の前の君に伝えることが出来たなら、どんなに幸いだろうか。

テーマ「雨に佇む」

8/26/2023, 4:46:24 PM

 辛いことも、悲しいことも、楽しかったことも、嬉しかったことも、全て。

私というモノの奥深くに、大切にしまってある。

私という存在を形成する、かけがえのない記録。

命を終えるその時まで、手放す気はない。

 たとえ、この世界がシミュレーションだとしても。

テーマ「私の日記帳」

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