ねえ、かえろうよ。
冷雨に濡れる君の背に向けて掛けた言葉は、雨音に掻き消されて届かず。
かぜ、ひいちゃうから。
君は動かない、濡れそぼったシャツの袖から伸びた腕は青白く微かに震えていた。
もう、かえろうよ。
すり抜けてしまう自分の両腕で、冷たい君の身体を抱きしめる。
冷たくなってしまった君の心と身体を、少しでも温めることが出来たら、と思いながら。
かえろう。
この冷たい墓石の下に自分は居ないのだと、目の前の君に伝えることが出来たなら、どんなに幸いだろうか。
テーマ「雨に佇む」
8/28/2023, 4:15:02 AM