誰もいなくて寂しい夕方、あの子は来てくれた。
黒く塗り潰された顔、ノイズが混じったような声、陽炎のように揺らめく輪郭。
何をして遊んだのかは忘れてしまったが、とても楽しかったのを今でも覚えている。
夕焼けと共に訪れて、黄昏時に静かに去っていくあの子。
名前も知らない、私の最初の友達。
誰も知らない、私だけの不思議な友達。
いつの間にか私の前に現れなくなった、会いたくても、もう会えない。
私の大切な友達。
テーマ「友達の思い出」
田植え後の薄く水の張られた田んぼに映る満天の星を眺めながら、街灯一つない真っ暗闇の畦道を歩く。
月明かりに黒黒と浮かぶ山脈と、ポツリぽつりと疎らに瞬く人家の灯りを目印にして。
足を踏み外さないように気をつけながら、サクサクと畦に茂る雑草を踏みしめる。
家の近くまで来ると、隣の家の塀の上から「ニャン」と猫の鳴き声。うちの猫だ。
帰りが遅くなると何時もここで帰ってくるのを待っていてくれる、賢くて可愛い三毛。
「ただいま」と抱き上げ、顎の下や背中を搔いてやりながら、また歩きだす。
三毛の丸くて大きな黄色い目が、瞬く星のようにキラキラと輝いていた。
テーマ「星空」
世界の始まりと終わり。
宇宙の中心と最果て。
生命の起源も終極も、なにもかも全て。
私という存在の意味も。
私意外の存在の意義も。
すべて、すべて。
テーマ「神様だけが知っている」
教育費無償、医療費無償、無償無償なんでも無償。
そのうち、衣料品も文房具も何もかも無償、現物支給になるんだろうか。
何でもかんでも、タダにすりゃ良いってもんじゃないでしょ。
今に人件費もタダになっちゃうんじゃない?
テーマ「この道の先に」
青々と葉を茂らせた梅の枝が天へと伸びていく。
夏の強い陽を浴びて、もっともっとと貪欲に。
気がつけば2メートル以上、枝が伸びているものもあった。
熱い風と日差しに、ヒイヒイ言いながら高枝切りを振り回す。
長く伸びた枝をパツパツと元から切っていく。
毛虫に気をつけながら、頭からダラダラと滴り落ちる汗を首元のタオルで拭いながら。
ビール、アイス、スイカ、と頭の中で唱えつつ、あと何本かの徒長枝に高枝切りを這わせた。
テーマ「日差し」