窓の外、片腕を上げた君がピョンピョンと飛び跳ねていた。
どこからか仕入れた情報を元に、毎度、奇行とも言えるようなことをする君。
今回は比較的マトモなことをしている。
梅雨時の窓拭き。
程よい湿気と暑さがガラスの表面に付着した汚れを落としやすくする。
冬場のように急速に乾燥しないから、しっかりと乾拭きが出来る。
鳥が激突してしまうくらい、ツルツルピカピカになる筈だ。
その前に君が力尽きなければ。
窓の外、汗だくになりながら窓拭きをする君の為。
グラスに注いだキンキンのレモネードとゴマ煎餅を手に、窓辺へ寄る。
テーマ「窓越しに見えるのは」
小指の赤い糸は何度でも、誰とでも結びつく。
プツンと切れては、蝶々結びされて、またその結び目がスルリと解けて、他の糸と結ばれて、の繰り返し。
生まれ落ちてから、死に至るまで。
一色の長い糸に、たくさんの結び目と、鮮やかな赤のグラデーションが出来上がる。
それは、きっと、とても美しいことだろう。
テーマ「赤い糸」
君は雷が嫌いだ、少し意外。
普段はクールな君が雷の鳴っている時だけは、ソファの影でクッションを抱きしめてブランケットまで被っている。
子供みたい、思うが決して口にはしない。
窓の外が光る度に、普段は聞けない君の情けない声が上がり、笑うのを必死で堪える。
直後、凄まじい雷の音と地響きがして、流石にビックリした。
近くに落ちたみたいだ、閉め切った窓のガラスがビリビリと揺れている。
ゴロゴロピシャーンッと元気な音がする、まだまだ雷は止みそうにない。
ふと君のほうを見ると、ソファの前に置かれたローテーブルがコタツに変身していた。
思わず噴き出し、大笑いしてしまった。
テーマ「入道雲」
長々としたサイレンが、真っ暗な空に響き渡る。
辺りは水を打ったようにシン……と静まりかえり、刹那、真っ赤な火の玉が尾を引いて空へと昇っていった。
暗い空へ、身をくねらせながら天を翔ける龍の如く、ある程度の高さまでいくと、くるりと渦巻いて一瞬消える。
直後、光が弾けた。
魂までも揺さぶられるような衝撃音、キラキラと眩い輝き、人々の歓声。
夜空を真昼のように照らす、超大輪の夏の華。
視界一杯に広がるその華は、色とりどりの光を空に散らしながら、静かな闇の中へと消えていった。
テーマ「夏」
既視感。
はて、どこか聞いたことのあるような。
こんなシチュエーション、前にもあったな。
この言葉、なんか言った覚えがある気がする。
何時だったか、何処だったか、誰にだったか。
思い出せない。
けど、そういう憶えが朧気にあるような。
いや、ないような。
うんうん唸っている内に、何にそんなことを思ったのか、キレイさっぱり忘れてしまった。
それすらも、既視感。
テーマ「ここではないどこか」