あの日は、梅雨時にしては珍しく、雲一つない快晴だった。
幼馴染みと出先で偶然再開し、昼だったのでそのまま一緒にランチをした。
観光客や学生でごった返す大通りから路地へ抜けて、個人経営だろう小ぢんまりとした喫茶店へ。
カリリンッ、と控え目なドアベルが鳴り、涼しい店内に入る。
カウンター席が六つ、テーブル席が二つ、テラス席もあるようだ。
テーブル席には既に先客が居たので、カウンター席に並んで座った。
老年の女性が「いらっしゃいませ」と持ってきてくれたメニュー表を二人して暫しにらめっこ。
悩みに悩んで結局アイスコーヒーとランチセットのAを二つ頼んだ。
出されたランチを食べながら、色々と話をした。
家族のこと、仕事のこと、趣味のことを。
ボリュームたっぷりなランチを平らげた君が食後のデザートと、追加でアイスクリームを頼む。
幸せそうにアイスクリームを頬張っていた君の顔が印象的だった。
午後も仕事だ、二人で駅前まで歩いて、他愛もない話をしながら、改札で別れた。
バイバイと手を振る君に、またねと手を振り返した。
一月も経たない内に、君が亡くなったと御両親から報せが入った。
テーマ「君と最後に会った日」
たくさんの黒い粒が規則正しく並べられ、大きな茶色い玉の中に収まっていた。
四尺玉の打ち上げ花火、子供の身長程の球体。
こんなに大きな物体を上空800メートルまで打ち上げるなんて。
素直に凄いと思った。
真っ暗な空に咲く、特大の花火。
今年も無事に打ち上がることを願う。
テーマ「繊細な花」
そんなものはない。
ただ、今日を生きるのみ。
テーマ「一年後」
とっとと大人になって働いて、独りで生きていこう。
そう思った。
たくさん勉強をして大学に行って、手に職つけて社会に出た。
ヘドロみたいな世界に浸って、定時までぼんやりと仕事をこなしていった。
代わり映えのしない日々に満足していた。
たとえ安月給でも、ブラック企業でも、もうなんでも良かった。
あの“檻”から、一秒でも早く脱出したかったから。
今は幸せだ、誰が何と言おうと。
テーマ「子供の頃は」
ザラザラザラッという音がした。
ごはんの時間だ。
二階の出窓から降りて一階のリビングのテレビの横のお皿へダッシュ。
階段を三段飛ばしで駆け下りる、首輪の鈴がジャンジャン鳴ってうるさい。
リビングのドアが閉まってる。
ドアノブ目掛けてジャンプ、ガシッと両手で掴んでぶら下がると、カチャッと音がしてドアが一寸だけ開いた。よっしゃ。
ドアの隙間をすり抜けて、テレビの横のお皿に駆け寄る。
しかし、空っぽだった。
どういうことだ。 はなしがちがう。
キッチンでゴソゴソと何かを作っている君の足元に、すり寄って抗議の声を上げた。
テーマ「日常」