自分の歩いてきた道を振り返る時が来る。
あっちこっちにグネグネと曲がって、所々凸凹してる、実に歩きにくい道だった。
スタート地点は遥か彼方で既に見えず、随分と遠くまで歩いてきたもんだ、と自画自賛する。
二股の道が何個もあった、選ばなかった方の道の先にはどんな光景が広がっていたのだろうか。
今となっては分からない、そして、どうでも良いことであった。
自分は駆け抜けたのだ、やりきったのだ。
生き抜いたのだ、自分の人生を。
それだけで、誇らしく思い、再び前を向く。
素晴らしい一生だった。
テーマ「たとえ間違いだったとしても」
買い物帰り、商店街を抜けていつもの坂道を上がっている時。
さあっ、と生暖かい風が吹いたと思ったら雨が降ってきた。
ええ、晴れてるのに?と思わず天を仰ぐ。
青い空からキラキラと、光りながら降りそそぐ雨に思わず、きれい、と呟いた。
もう少しだけ見ていたかったが、洗濯物を干していたのをハッと思い出し、帰路を急ぐのだった。
テーマ「雫」
突き刺さるような熱い太陽光に曝されて、湿ったハンカチを扇子代わりにしながら、陽炎揺らめく交差点に歩を進める。
車道との境界に植えられたツツジの白い花に元気を貰いながら、あと少しあと少しと、人通りの少ない歩道を歩く。
舗装が簡素なものに変わり、少ししたところ、木々の合間に石の鳥居が見えてきた。
手前の自販機でメロンソーダを買って、プシっとキャップを開けて呷る。いきかえる。
鳥居の前で一礼、石畳の端を歩く。
ひんやりと涼しい空気に、まるで別世界のようだとググーっと背を伸ばす、ついでに欠伸も一つ。
誰もいない、静かな神社の境内をのんびりと回る。
本坪鈴をカランカランと鳴らして、一礼二拍手一礼。
お願いごとは、特にない。
テーマ「何もいらない」
もしも未来を見れるなら。
今日は、学校を休んでゲームでもしよう、とあの子に言っただろう。
もしも未来を見れるなら。
あの日、母の大好きな甘い甘い和菓子を、一緒に食べただろう。
もしも未来を見れるなら。
あの時、見知らぬ人の手を取って、高台に逃げただろう。
もしも未来を見れるなら。
あの夜、電話越しに感じた、友の悲しみに寄り添っただろう。
もしも未来を見れるなら。
藻掻きながら苦しみながら、這いつくばってでも生きることは、しないだろう。
テーマ「もしも未来を見れるなら」
朝一番に君にキスをして、おはようと笑いかける。
ご飯を二人で食べて、並んで洗い物をして、二人で出掛ける。
繋いだ手をプラプラ揺らして、雑貨屋や服屋で買い物して、小洒落たカフェで休憩しつつ早めのランチを食べる。
一口あげたり、もらったりと、カフェ中にバカップルぶりを見せつけちゃう。
お腹を満たしたら映画館で映画を見る、もちろん席はペアシート。
ゆったり寛ぎながら流行りのアニメ映画やら邦画をたくさん見る、けど最後は寝ちゃってて、呆れながら君が起こしてくれる。 欲を言えばココでキスしてほしい。
夕焼け色に染まる商店街を、今晩のおかずを考えながら二人並んで歩く。
君の屈託のない少年のような笑顔。
眩しくて温かい笑みに、心が疼いた。
この世界なら、この無彩色の世界なら、君と二人、自由に生きていけるのにね。
お題「無色の世界」