猫(筆に随ふ)

Open App
4/6/2025, 12:09:28 PM

 外国に行って世界地図を見ると面白い。言うまでもないことであるが、日本が中心に描かれていない。地図にも色々ある。私は海図が好きだ。深度や底質、潮流や海流、灯台やその灯質などが詳しく描かれている。コンパスローズには自差、偏差などを知るための情報が載っている。地球の大きさを感じられるから好きだ。

4/5/2025, 1:52:12 PM

 恋愛ということほど分からないものはない。

4/1/2025, 10:46:54 AM

 高浜虚子は自身の随筆の中で、俳人というのは、発句と脇句の中で、あるいはそれに続く付句の中で、場所を超えて、時代を超えて、それぞれが互いに挨拶を交わすことがあるのだといったことを言っていた。普通人々が言う「はじめまして」、「寒いですね」、「今日は良い天気ですね」よりもやや進んでいるという。

 鳶の羽もかいつくろひぬ初しぐれ 去来
 一ふき風の木の葉しづまる 芭蕉

 --時雨が今日始めて降りました。木に止まっていた鳶が、その時雨に濡れて翼をはたはたとはたいてまたもとの通り収めました 去来

 --そうであった、その時私の見た景色は、さっと風が吹いて木の葉がはらはらと散ったが、すぐそれはもとの通りに静まった 芭蕉

 はじめまして、の挨拶の際に何も句を交わす者もこの時代にはなかなかあるまいが、しかし、自然のことや時事のことなどを互いに交わしながらコミュニケーションを取るというのは、後世に残して行かねばならないとても素晴らしい文化であると思う。
 挨拶というのはただの声かけではない。一言を述べた瞬間に交わされる、目には見えない沢山のものがある。そういうものを私は大事にしていたいと思う。

3/31/2025, 11:57:50 AM

 またね、また会おうね、もう一度会うことを期して言うこの言葉を、永久の別れとされている死というものに際しても私は使いたい。前世とか、来世とか、天国とか、地獄とか、宗教如何はどうだっていい。久しぶり、と言ってまた、もう一度会いたい。それほどに永遠を、信仰の永遠を疑わず、力強く、辛苦に負けずに生きていたい。

3/30/2025, 12:49:59 PM

 音で読めばシュンプウ、訓で読めばはるかぜ、季語で言えば、東風、花菜風、柳風など、色々の春風が日本各地を吹き抜けている。
 昨日、今日と、寒の戻り、花冷えに、特に宵の時分は、春の装いでは寒さが肌に染み渡ってきた。つい先ほど、道を歩いていたら、街灯の明かりに照らされ、雪柳が寒そうに静かに揺れていた。そのすぐそばの道際に、しなびた椿が一つ二つ、無惨に転がって落ちていた。
 訪日観光客、移住者の数は鰻登りに増え、日本は今、オーバーツーリズムなどの問題に悩まされている。日本を訪れる人々には、私は、日本の花鳥風月、季というものを知って欲しいと思う。日本の花鳥風月、季というものは、尊重してくれと言ってそれを強いる類のものではないと私は思う。住めば、耳を澄ませば、目を開けば、香りを嗅げば、知れば、感じれば、自ずから大切にしようという気にさせてくれるのが、日本の花鳥風月、季の特長である。
 政治は政治でやることがあるのだろう。文芸は文芸でやることがあるのだろう。私はいったい、何が出来るだろう。少なくとも、ただ排他の精神で外国からやってくる人々に接したくはない。春風のようにうららかに人々を包み込めるような人物でいたいと私は思う。

Next