その健やかなるときも、病めるときも、
喜びのときも、悲しみのときも、
富めるときも、貧しいときも、
これを愛し、これを敬い、
これを慰め、これを助け、
その命ある限り、真心を尽くす ことを誓いますか?
あなたは私を見つめ、私はあなたを見つめ、
互いに微笑み、キスを交わし、指輪を嵌めた。
私たちが夫婦となってもう何年が過ぎただろう。
あのときの誓いは今も果たされているのだろうか。
当たり前すぎる日常が、当たり前に過ぎていき、
何気ない日常が、何気なく通り過ぎる。
燃え上がるような恋は終わりを見せ、
穏やかな愛が広がっていく。
誓いの言葉が果たされる証明は、きっと死に別れる瞬間か、違う道を歩き始めるときだろう。
そう思って過ぎた時はあまりにも長いものでした。
いつか理想の夫婦を描いた二人の夢に、
少しは近づくことはできたのでしょうか。
【夫婦】
こんなにもあなたを好きになるとは思わなかった。
ほんの一瞬の邂逅…ひと言たりとも話さなかった。
私はただ遠くからあなたを見ていただけ。
爽やかに笑うあなたが眩しくて、廊下を走るあなたを目で追いかけた。友だちと巫山戯あうあなたが微笑ましくて、ただその姿を見るのが楽しかった。
それがいわゆる「初恋」だと理解したのは、あなたと会わなくなって2度目の秋の訪れの時期だった。
私はただあなたを好きになっただけ。
私の初めての恋が、花を咲かさず、実もにならず、人知れず散っていって終わるだけのものだったのに…。
今でもまだ募るこの想いをどうすればいいの?
手を離すにはあなたの存在は大きすぎて、
腕に抱えるにはあなたへの想いが重すぎる。
いつか私は、私のその想いに身を潰してしまいそう。
始まりもなく終わった恋を、
後悔も未練もないその恋を、
終わらせる術があるのなら、
―――…どうか、私に教えてください。
【どうすればいいの?】
わたくしの宝物はあなた様でございます。
巧みな話術、豊かな才識、品のある仕草、そしてわたくしを包み込む広く温かな御心。
愛をささやき、肌を合わせるその瞬間は、わたくしにとって至福のひと時でございました。
ですがあなた様は恋多き、数多の浮名を流すお方。
わたくしの他にも契りを交わす女(おなご)がいることも知っております。そう…悋気など数えきれぬほどに。
恋しとよ 君恋しとよ ゆかしとよ
逢はばや見ばや 見ばや見えばや
それでもわたくしが贈りました文に、馬を駆けて来てくださったあなた様をどうしてお恨みなどできましょうか。
わたくしの宝物はこなた様でございます。
宝物は人様にお見せすると盗まれてしまいますので、こうしてわたくしが常にお抱えしているのです。
そうですね…かれこれ100年ほどの月日が経ちますが、大事に大事にしておりますので、なんとかかすめ取られずに今にいたります。
たとえ骸になり果てようとも、わたくしの宝物は誰にも奪わせはいたしません。
昔も今も、そしてこれからも―――。
『恋しいと 君が恋しい 慕わしいと ただそれだけ
逢いたい 見たい 見たら 逢えたら―――…』
【宝物】
あなたに出逢えた嬉しさと、
あの人を知った喜びと、
君を愛した寂しさが、
― ボクノ " 幸運 " ノ最ノ果テ ―
僕の心を灯すキャンドルよ。
あとどのくらいその炎を揺らせるのか。
【キャンドル】
君と初めて会った校舎裏は今も変わりはないのでしょうか。一緒に帰った通学路はとうにその景色を変えてしまいました。
君から貰った小さな香水のプレゼントは、ほんの少しを残して引き出しの奥にあります。何度か捨てようとも思ったのですが、残念ながらできませんでした。
君を好きだと言った冬の海を覚えていますか?
真っ暗な海なんて何も見えないのに、今もあの小波の音を覚えています。
何気なく交わした会話。触れた手のひらのぬくもり。
君を想って泣いた夜。会えた時のあの嬉しさ。
別れ際の大きな背中。伸ばした手を君は知らない。
君と別れてからもうずいぶん経つのに、このたくさんの想い出だけは無くなりそうにありません。
【たくさんの想い出】