月が凪ぐ夜

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11/2/2023, 1:20:27 PM

あなたが眠りにつく前に、私は小さく子守唄を歌う。

さあ、目を閉じて。もうなにも怖くはないわ。
あなたに仇なすものはすべて消してあげる。

あなたを貶める声が聞こえたのなら、その喉を握り潰してあげましょう。
あなたが目にする醜いものは、二度と見えないように焼き尽くしてあげる。

誰かがあなたの腕を掴むのなら、その手を切り落としてあげましょう。
あなたに邪な想いを抱く者には、私が優しく身の程を教えてあげるわ。

あなたには私がいればそれでいいの。
私があなたを守ってあげるから。

だからあなたは安心して私の腕の中でお眠りなさい。
とこしえに目覚めぬ眠りを私があなたに贈ってあげる。


【眠りにつく前に】

11/1/2023, 3:41:42 PM

永遠とは、なにをもって永遠と見なされるのだろう。
永遠のいのち? 永遠の愛? 永遠の世界?

永遠なんて私は知らない。信じない。
なにごとにも必ず終りが来ることを私は知っている。

人のいのちは有限であり、いずれは等しく死を迎えるだろう。
人の思いは陽炎のように移ろい、消えゆくことさえ気づかない。
数多の星にも終焉は訪れ、やがては虚無の渦に巻き込まれていく。

永遠とはあまりにも儚いものだ。
けれど、だからといって別に悲観的には思っていない。永遠という、言葉そのものは非常に美しい。

私もかつて永遠を信じていたし、夢見ていた。
幼心に幻想(ゆめ)みるには、永遠とは綺麗な言葉だ。

ただその言葉が持つ誘惑は、人を毒するものだと忘れないで。―――決して、忘れないで。


「永遠に君を愛するよ」
そうしてあなたは私を裏切ったのだから…。



【永遠に】

10/31/2023, 11:52:42 AM

なにもいらない。
あなたしかいらない。

あなたがいれば、そこが私の理想郷。



【理想郷】

10/30/2023, 2:18:46 PM

古い卒業アルバムをおもむろに開いて、
在りし頃の若い君の写真を見つけた。

まだ丸みを帯びた輪郭に、まだ広い肩はない。
やんちゃな笑顔に、その目が眩しく見えて。

幼くて、拙くて、青い恋だった。
それでも確かにあった君と僕の思い出。

かつての時間に、いつかの場所に、
いまもなお消え失せることのない記憶。

だいぶ時間は経ってしまったけれども、
その関係はいびつな形に変わってしまったけれど。

ページをめくればいつでも思い出せる。
「懐かしい」と今では穏やかに話せる気がするよ。


【懐かしく思うこと】

10/29/2023, 10:45:00 AM

あなたが笑う。その隣に私がいる。
他愛ない話を語りかけて、幸せを彩っていく。
小さな小さな白い家。庭には四季の花々を飾り、温かなリビングであなたの子どもとあなたを待つ。

あのときあなたを追いかけていたら、
そんな未来もあったのでしょう。
今はもう交わらないあなたと私。

これは遠い昔に筆を置いた、
読み手のいないもう一つの物語。


【もう一つの物語】

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