沖縄の海はとんでもなく美しくて
「暑い」
君と見る青い海に俺の心は
「暑い」
君と聞く本物の波の音はそれは
「暑い」
「うるせーな、もう! 雰囲気台無しだろ!」
「ふんいきいらねーのよ!暑いんだもんっ、はよ日陰行こーぜっ」
せっかくの空き時間にいい感じに2人になったってのに味気ない。そりゃ暑いは暑いけどな!!
ふんっと鼻を鳴らしてコテージに向かって海に背を向けた俺の服が、ふと引っ張られる。
「……なに」
「かい」
え? と振り向くと、俺のシャツを握ってた手を離して君はしゃがみ込み、砂に落ちていたきれいな色をした貝殻を拾った。
「やる」
「はぁ? なんでよ」
「なつの、おもいで」
君は照れくさそうにそう言うと、俺の肩をポンと叩いて駆け出していく。
「なーにがふんいきいらねーのよ、だよ」
どっちがロマンティストなんだか。
貝殻を翳す。遠ざかる君の背ときれいな貝殻。
夏の思い出。
▼貝殻
きらめきは、まさに君そのものを現す言葉。
キラキラとひかり、かがやき、俺を魅了する。
だが君は言う。
俺のかがやきは君を照らすひかり。キラキラときらめき、君を誰よりも魅了させる。
俺のかがやきは、誰かを照らすひかりなんだ。
君を照らせて、とても嬉しい。
君はそう冗談めかせてエヘヘと笑うから、俺もそんな君にただただ目を細める。
眩しくて、まるで何も見えないかのように。
▼きらめき
「なーなー、これなんて言うんだっけ?」
君はどんな些細なことでも俺に聞いてくる。周りがうっかり呆れるくらい。
呆れる?なんで?俺は一度も面倒なんて思ったことないってのにね。
だって俺は誓ったからね。一生君の辞書になる、と。
それに特典もあるんだぜ。
「えへへ、ありがと」
その笑顔。
▼些細なことでも
何度辞めようと思ったことか。実際口にしたこともある。とんがっていただけの、俺はただの若造だった。
けれど鼻で笑って強がって見せる度に、その度にちくりと胸の奥が痛んではいた。その痛みだけは、今も強く覚えている。
君もあの頃、加減を知らない若造で。お互いただ生き延びるのに必死な若造で。
そんな君があの日俺に必死にすがって叫んだ俺の名は、確かに俺の胸に痛みと共に深く刻まれた。
それは今は穏やかな時を過ごす俺たちの、俺の大事な記憶。心に刻まれた灯火。
▼心の灯火
未読の数字が2桁になってる。スマホを放り投げてため息をつく。
バカバカバカバカ、一緒に行こうって言ったのに直前に仕事入っちゃったってなにそれ。
バカバカバカバカ俺のバカ。急な仕事ならしかたない、自分だってそういうことあるのになんで怒っちゃったんだろ。
君は悪くない。ムカつくけど。俺が全面的に悪い。それは、わかってる。
「だけど一緒に行きたかったんだもん!!」
「……だったら素直にそう言えよ」
俺が開かないもんだから、仕事終わってから来てくれた君が、俺の横で延々とLINEを送りながら苦笑する。
その余裕のある顔もムカつく。ムカつくから君が部屋にいる間は、LINE開いてやらないんだ。
▼開けないLINE