かぼちゃの煮物が美味しくなってくるころ
ケーキとおせちのチラシが目立ち始める。
店に並ぶゆずを見て いつかの柚子風呂を懐かしく思い、
足元から吹き上げる木の葉に過ぎゆく秋を見る。
ひたひたと近づく冬の気配に、クリスマスを今か今かと待つような、
そんな時期はとうにすぎてしまった。
こんなにも、寒いものだったろうか。
マフラーに顔を埋め、
帰り道に漂う鍋の匂いに足を速める
冬の始まり
ひんやりと、影と音が溶け消える夜を抜けて
ビルとビルの隙間から昼間が溢れる
日に焼かれた影がじんわりと時を刻み
青を告げるカッコウの声に混じる足音が増え始める。
だんだんと街が起きていく気配、靴を履いて扉を開ければ
僕らは今日も
誰かの影を踏み越えて歩く
太陽の下で
かぼちゃの煮物を食べて、湯にゆずを浮かべて
あと少ししたら赤やら緑が目立つ飾りをしまって、大掃除をして、一日飾りにならないように新年の準備をする。師走とはよく言ったものである。
これが終わればあとはゆっくり過ごせるだろう
かすかに雪が積もっていく音
こたつでみかんを剥いて、ストーブの上のやかんからお茶を入れる。
ごーんと音が響いて年が明けたら、
そっと布団をめくって、潜り込んでいる猫と新年の挨拶でもしようか。
冬になったら
葉が落ち、冬の気配が顔を覗かせる頃。
いつも通りの散歩道だった。流石にまだ早かったかと、持ってきた手袋を上着のポケットに入れようとして取り落とした。拾い上げて落ち葉をはたき落とす。
ふと前を見れば黒い子猫がこちらを見ていた。座ってこちらをじっと見つめたかと思えば、少し進んでは振り向いてなぁと鳴く。
気がつくと後を追って歩いていた。
するすると路地を抜けて行った先に、長い石段。少し褪せた鳥居をくぐり、登りきったところでまた座ってこちらを見ていた。
少し近づけば、とうに役目を終えた賽銭箱の下に、黒猫が臥せていた。子猫が走り寄るのを見るに、親猫なのだろう。さすがに手袋では心許なかろうと、巻いていたマフラーを置いて参道を戻る。
なぁと鳴き声が一つ、もう猫はいなかった。
子猫
雨戸に当たる涙雨
山間の仄暗い誰ぞ彼
色褪せた彼岸花
ゆっくりと冬へ向かっていく、あの物哀しい秋の夕暮れ
哀愁を誘う