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12/15/2023, 6:02:31 AM

「イルミネーション」

 別れる男には、花の名前を教えるといいらしい。毎年咲く花を見るたびに、自分を思い出させることができるから。
 目の前に広がるのは、キラキラと輝く一面のイルミネーション。周りは家族やカップルばかりで、1人で見ているのは俺くらいだろう。4年前に別れた彼女は、毎年この場所に俺を誘った。
「また来年も、あなたと一緒にこの景色を見れますように。」
 そう言って微笑む彼女の顔が、脳裏にこびり付いて離れない。彼女が俺にかけた呪いは、まだ解けてくれないみたいだ。

12/14/2023, 3:12:33 AM

「愛を注いで」

 私は彼のためなら何だってできる。苦手だった家事も苦ではないし、もっと綺麗になるための努力も惜しまない。
 サボテンに水をやる。なんだか元気がないみたいだ。肥料をあげた方がいいかもしれない。彼との約束までまだ少し時間があるし、今から買いに行こうかしら。
 彼が好きだと言ってくれた服と靴を身に着け、軽い足取りで玄関から飛び出した。

12/13/2023, 3:32:27 AM

「心と心」

 「言葉にせずともあなたは私のことを理解してくれる。」
「私もあなたの考えていることは手に取るようにわかるのよ。」
「私達は心と心で繋がっているのだから。」
 そう言って笑う彼女の顔を、曇らせたくはなかったのに。
「どうしてわかってくれないの。」
 彼女が呟いた。涙で濡れた瞳は宝石のように輝いて見えて、とても綺麗だと思った。
「君を理解できたことなんて一度もなかったよ。」
「君だってそうだろ。」
 とうとう泣き崩れてしまった彼女が何を考えているのか、やっぱり僕にはわからなかった。


12/12/2023, 3:10:15 AM

「何でもないフリ」

 脈打つ心臓の音がやけに大きく響く。指先は氷のように冷たくなって感覚がないというのに、掌にはじっとりと汗が滲んで気持ちが悪い。溢れ出そうなものを無理矢理飲み込み、彼女に背を向けて歩き出した。踵を返すその瞬間、彼女の瞳に映る俺は、いつも通りの無表情。ひどく胸が痛むような気がするが、これは俺の勘違いだ。そう、思うことにした。

12/10/2023, 12:21:42 PM

「仲間」

 俺達は単なる仕事仲間だ。このミッションが終われば、もう一緒にいることもなくなるだろう。そう思っていたのに、あいつと行動を共にし始めて、どれほど長い年月が経っただろうか。とうとう俺達の目的が達成されることはなかった。血溜まりの中で息絶えたあいつは、少し笑っているように見える。まさか最期まで一緒とは思わなかったな。走馬灯のように蘇る記憶は、あいつと過ごした日々の思い出ばかりだ。薄れゆく意識の中、俺は少し笑った。

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