11月下旬、窓からみえる空は曇り。
独りの少女が激しく揺れる電車で眠っていた。
少女はフードを深く被り、マスクをしてサングラスも付けている。それでも分かるほど、顔を歪め、マスクの隙間は汗で光っている。
私はその姿に違和感を覚えた。
そして、暫くすると少女が急に目を覚ます。
ゆっくり目を開けると言うよりは、何分も水の中で悶え、やっと解放されたかのような様子で、勢い良く目覚め、荒々しい呼吸を繰り返している。
そして息を完全に整える終わるよりも先に、立ち上がり、電車内を走り始めた。
私は中橋隆治、探偵だ。
世間でもそこそこ名の知れている、
abc探偵事務所に属している。
今日は特に依頼もなかった故、珈琲を飲み、事務作業に勤めていた。
周りからは常に平和な会話が聞こえてくる。
こういう日は正義感のある私にとって好きだ。
だが、こういう日に限り、私の後ろで私を見てはそらしを繰り返している後輩の鈴木君がいる。非常に目障りだ。
私は彼に声を掛けることにした。
「如何したんだい?鈴木君」
鈴木は戯けたような小さい声で、
「あ、えっと、中橋さんに警察から依頼です……昨晩、殺人事件があったようで…、警察も手に負えないようなんです。……詳しいことは、ここから2駅の現場で実際に聞けるようです……私も助手を務めますので……ご一緒に、」
成る程。この言い方、恐らく鈴木君は市警にすぐ行くと言ってるのだな。だから集中してる私にこんなこと言ったら怒ると思って気が小さいのか。
一度本気で鈴木君に怒ってから随分怖がられた物だ
私は鈴木君に優しく
「すぐ行こうか。事務仕事ももうすぐ終わるし」
と声を掛けて、珈琲を飲み干し、外套を着た。
鈴木君はもう行く準備が出来てるようで、返事をして、私を待つ。
其れから出発して、二駅揺れ、十分程歩くと現場に着いた。
現場は、二階建ての被害者の自宅。
現場の付近には、軍警三人に目撃者、第二発見者がいる。軍警の一人に、
「abc探偵事務所の中橋です。早速、現場に通して貰いたいのですが。」
と訪ねた。
その軍警は
「はっ!お待ちしておりました!中橋さん、どうぞ此方です。」
と言い、遺体の所まで案内してくれた。
現場は二階の三つある部屋の被害者自身の部屋。
死因は刺殺。部屋の窓は閉まっていて、部屋に鍵は無く、すぐ開けられる。部屋は散らかっていて、そこら辺のゴミに血が滲んでいる。
刺された場所は左足、腹部、胸部。
特に腹部が酷く、思いっきり切り開かれたようになっていた。切り方からして、犯人は左利きだろうか
怖がっている内に足を刺され、腹を切り裂かれ、痛かっただろう。
私は帽子を一度脱ぎ、胸に当て、目を閉じ、黙想した。鈴木君も同じようにして手を合わせた。
すぐ其処にいた、ここまで案内して貰った市警に
被害者について聞いた。
被害者は20代女性、三浦知子さん。
職場はここからすぐのde会社。
結構恨みを売るタイプの仕事だ。
其奴が殺した可能性が高いだろう。
出身校はすぐ其処のhis学校。
死亡推定時刻は3:00~6:00とされている。
被害者の妹、三浦陽子さんと二人暮らしで、両親は既に他界されているようだ。
私は一度現場からは離れて目撃者の話を聞くことにした。
第一発見者はさっき聞いた、被害者の妹の三浦陽子さんだ。
陽子さんの言うことが正しければ、
知子さんを発見したのは、卒業旅行から帰ってきた13:00時頃だったらしい。帰ってきた報告と、土産を渡そうと部屋を訪ねたが、返事が無かったので、部屋を開けたら既にこの状態だったという。
陽子さんは直ぐに警察に電話し、息絶えていると分かっていても、救急隊員も呼んだようだ。
後、知子さんは目が悪かったようだ。
眼鏡を付けなければ何も見えない。
でも、その代わり耳は人一倍良かったようだ。
第二発見者は佐野晴紀さん。
知子さんとは恋人同士だったようだ。
家族以外で唯一、この家の合鍵を持っているようだが、丁度昨日、この家には来ておらず、
今日朝6時頃にこの家に来たようだ。
晴紀さんの行動を絞ってみると嘘をついているとは思えない購入履歴が出てきた。それに、玄関にある、防犯カメラにも映っていた。
其処からずっと佐野さんは知子さんが家に居ないと思って居たようなので、1階で過ごしていたようだ。
リビングにペット用カメラも有ったが、しっかり陽子さんが帰ってくるまで1階に晴紀さんが居るのも映っていた。
死亡推定時刻は早朝の3:00~6:00。
合鍵は陽子さんと晴紀さんが持っていた。
こじ開けられた形跡もない。
1階には晴紀さんがいる。
知子さん家の間取りはL字型でL型の白の所には間を埋めるように正方形のガレージがある。
あと、知子さんの部屋は突き当たりだった。
そして、ベランダも無く、ガレージのない方向の小さな窓があったが、
もし、コンクリートの滑る壁を登れたとして、こんな小さな窓から出入りなど出来る筈がない。それに鍵だって掛かってる。
第一、窓からの犯行だとしてもおかしいのだ。
知子さんはドアを正面に後ろに倒れ、
血の位置的にドアから刺されたとしか云えない。
私が来るまでに押し入れから屋根裏部屋まで、
隅々まで家を見たらしいが、なにも出てこなかったようだ。
犯人は何処から何処やって入り、知子さんを殺して、何処に消えたのか。
面白くなってきたね。
其れから私と鈴木君は部屋の構造を見て回ることにしたのだ。
二階の知子さんの隣の部屋は陽子さんの部屋だという。随分華奢な部屋で、特に何も無さそうだし、逆に私達が犯罪者になりそうなので、直ぐ立ち去った
その隣は、たまに泊まる晴紀さんの部屋だった。
よく煙草を吸うのか、煙草の灰皿の中に吸い殻が捨ててあった。
丁度窓を開けるとガレージの屋根が見える位置だ。
1階は、全体的に広いイメージだ。
柱が少ない分、壁が厚い。
リビングの大きい窓から直ぐ横にガレージがあり、上を見ると晴紀さんの部屋が見える。
目撃者二人には証拠のある、アリバイがあるので
一番、知子さんに恨みを持っていそうな人の依頼も情報がある、de会社に足を運んだ。
探偵事務所の免許証を見せ、
提供された資料を鈴木君と一緒に、絞っていく。
そして、ある男が鈴木君の目に止まった。
被害者の事を必死に書き留めていたメモを読んで、もう一度資料を見る。
そして、私に渡して
「中橋さん、この人、被害者と出身校が一緒です。若しかしたら、犯人かも。」
そう言って渡してきた資料を見ると、
高橋高志さん
背の高い、気の弱そうな男性。
そして、知子さんと同い年だ。
私はこの男性に心辺りがある。
知子さん亡き今、この男性とどう言う関係なのかも分からない。
だが其れは、この資料に載っている電話番号に電話しなかった場合だ。
私は迷わず、この男性に電話した。
プルルルルルル…プルルルルルル…カチャ
出た。
「abc探偵社の中橋です。高橋高志さんでお間違えないでしょうか?」
「…はい、そうです。どうかなさいましたか?」
「貴方の同級生の三浦知子さんが事件でお亡くなりになられたのですが、何かご存知ですか?」
「本当ですか?……私は何も知りません。」
「そうですか。昨日の夜から朝6時まで何していましたか?」
「…その時間は家で寝て居ましたよ」
「いいえ、貴方は知子さんの防犯カメラに2:00頃映っていましたよ。何故今嘘を付いたのです?」
「怪しまれるのが嫌で…嘘を付いた」
「貴方が犯人ではない証拠は?」
「俺がどうやって入ったか、どうやって出たか分からないだろう!証拠が無いとお前は俺を逮捕出来ない!」
「有りますよ。如何やって入り、如何やって出たのか。実に簡単だ。その持ち前の身長と、長い手足で知子さんの家のガレージに2:30頃、よじ登った。そして、よく煙草を吸う、晴紀さんの窓は鍵が掛かって居なかった。だから其処から入り、知子さんを殺したのだ。
耳の良い、知子さんが殺された時、ベッドに居なかったのも頷ける。」
「…俺が其奴を殺す意味があるのかよ!それに身長の高い奴なんて他にも大量にいる!」
「…ここからは私の推測ですが、貴方は知子さんの元恋人だったのではないですか?
でも知子さんに振られ、そのまま復縁出来ず卒業してしまった。だが貴方は知子さんを諦めきれずにいた。
そんな中、知子さんがde会社に勤めている噂を聞き、de会社に客として訪れ、知子さんの家も特定した。そして知子さんの家を良く眺めた。
だからか、知子さんと晴紀さんが恋人同士だと分かった。貴方は酷く苛立ち、晴紀さんではなく知子さんにも恨みを晴らし、晴紀さんも悲しむよう、妹と晴紀さんが居ない間に忍び込み、知子さんを殺した。違いますか?」
「………その通りだ。降参だ。俺を逮捕してくれ。
知子を殺すなんて、気が狂ってる。」
「貴方の家に今から向かいます。
其処で大人しく待って居て下さい。」
電話を切り、すぐ資料に載っている住所を市警に伝える。そして会話を聞いていた鈴木君と頷いて、犯人の家へ向かった。
其れから1時間後、無事犯人も抵抗無しで捕らえ、
私達は解放された。
私は背伸びをしながらあくびして、やっと帰れるー
と思っていた。その隣では、鈴木君が私を尊敬のまなざしで見ていて、「あんな少しの情報で犯人の動機も当てちゃうなんて凄い!」
だとか言っている。
だか、軍警も手に負えないとか言うから、期待したのに案外簡単だったなー。と心の中で見栄を張りながらオレンジ色の空の下を歩いて行く中橋と鈴木であった。
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(キリトリ線)
ちょっと最後オチが思いつかなかったんですけど
ここまで見て頂きありがとうございます!
今日始めて推理小説書きました。
なんも準備もせず、考えもせず書いていったらこうなりました。
あと、まだ少ししか投稿していないに沢山のハート?ありがとうございます
私がまだ10歳だった頃。
4歳の妹、真幸と二人でおつかいに行った。
お母さんは、忙しくて行けないから二人で、
すぐそこの商店街に、人参とジャガイモを買いに行った。お金を多めに渡され、お釣りはお菓子を買ってきて良いと言われた。
八百屋から駄菓子屋に行く途中。
横断歩道。赤信号。
片手には10歳の私の、片手では重たい、人参4本とジャガイモ6つが入った袋。
もう片方の手は、元気の良い、好奇心旺盛の4歳の妹。流石の妹でも4歳、大丈夫だろうと完全に油断していた。
信号が青になる。
その瞬間妹が、向かいの駄菓子屋に駆けだした。
その時、信号無視してきた、居眠り運転の若い男が乗った車が凄いスピードで突っ込んできた。
この瞬間は恐らく一生忘れられない。
私は尻もちついて、後ろに倒れ、
妹は車に思いっきりぶつかった。
車は、すぐには止まらず、
妹にぶつかった振動で起き、
ブレーキを掛けるまで止まらなかった。
私はなにが起こったのか理解できず、
ずっと尻もちを付いていた。
妹の血らしき、赤い水溜まりがじわじわ広がっている。
哀しいと言うより、怒りというより、
絶望に近かった。もうだめなのだ。
10歳の私でも、これは駄目だ。助からない。と分かっていた。分かっていたけど諦められなかった。すぐに駆け寄ってあげたかった。だけど怖くて動けない。私は画にかいたかのように、怯えていたのだ。
結局、私は何もできなかった。
このことを今でも後悔している。
あの時、手を離さなかったら。
あんなことにはなって居なくて、
今頃、妹の結婚式に呼ばれちゃったりして。
楽しく過ごせてたのかな。なんて、
今、私が握っている、この小さな命。
あの時みたいになってたまるか。
絶対あんな事にはしない。
「ママ、痛い。」
「あら、ごめんね。」
絶対、絶対、幸せにしてあげるからね。
お題/力を込めて
私は目を開けた。
サッと明かりが迫ってきて咄嗟に目を細める。
隣で誰か動いてる。
お母さんとお父さん?
何でここに…
そんな事よりも何で泣いてるの?
私は起き上がろうとして気付いた。
私の顔につけてあるポンプ、チューブ達。
私、そんなヤバいの?だから泣いてるの?
御免けど全く思い出せないや。
一度本気で考えてみようと、
一番楽な姿勢に戻る。
私が目覚めて、動こうとしている
のにも関わらず
隣の医者や看護師、
ましてはお父さん、お母さんも
さっきと同じ体制で肩を揺らしている。
昔から体は弱かった。
今私が見ている病院の白くて、申し訳程度の模様の入った天井。
一体この天井を見るのは何回目なのだろう。
声を出してみる。
でないと思っていた声がすんなり出て来て
正直驚いた。
それを良いことに私は大声で
「如何したの?!」
と呼びかけた。病室内にひびく私の声。
誰も反応しない。おかしい。
「お父さんお母さん!私目が覚めたよ。元気だよ!」
反応無し。
チューブ類が外れないよう、動いてみる。
さっきより大きい声で、動きながら叫ぶ。
全く状況は変わらない。
私は居ない事になっているの?
空気?
お父さん!
私はお父さんの肩を叩こうとした。
叩けない。イヤ、すり抜けた?
え?私死んだ?
叩く勢いで、チューブが外れてる。
苦しくもなんともない。
全部抜いてみる。
なんともない。
さっきから聞こえる、不吉な音。
ピーーーーー………絶え間なく鳴っている。
その機械はどう見ても私に繋がれている。
本当に死んでしまったの?
急に悲しさというか、感情がドッと来て、一気に涙目になる。お父さんとお母さんを見つめて、
問い詰める。「いい加減にしてよ!!」
何も帰ってこない。
あれから私は元気な体で起き上がり、
死んだ私と分裂していた事に気付いた。
正直怖い。私は誰からも、見れない世界に一人で、
生きなきゃいけないの?いや、生きる?私って今、生きてるの?死んでるの?それともそれ以外?
あれから月日が流れる。
私が学校で仲良くしていたグループや、先生達は最初の三ヶ月は、無理に生きているような目をしていた。そして私に関する事は完全に禁句になっているらしい。
だが最近は笑顔が増えてきた。
楽しそうに話していて、まるで1年前と変わらないように。つい最近まで私もあそこに居たのに。
私の居る定位置なんか最初から無かった用に、
楽しく、喋っている。
あぁ。私も前まで知っていたのに。
最近の皆の事や、身内ネタも、知ってたのに。
恐らく私が生き返って話に入っても、もう分からないのだろう。
これからは私の知らない、世界になっていくのだろう。
新しい転校生や先生が入ってきても、私は知らないし、分からない。
私が歩いた廊下も座っていた机も。
今では私がいた事なんて分かりもしない。
私は本当にこの世から消え去ってしまったんだ。
~お題/過ぎた日を思う~
コツン。
私の目の前にアイスコーヒーが置かれた。
いつもは声を掛けて置いてくれるのだが、
私が外を眺めてぼーっとしていたので
きっと気を利かせてくれたらしいのだ。
私はひと言、「ありがとう。」
と、いつもの可愛い女給さんに感謝を伝え、
アイスコーヒーを一口飲んだ。
ほろ苦ーい、いつもの味。
うん、美味しい。
また外を見つめる。
今日はもう帰るかぁ。
そろそろ社の休憩時間が終わる。
いつもはもうちょいゆったり出来るのだが
最近仕事が忙しい。
サボり癖のある私も最近は出社している。
コーヒーを一気に飲み干し、会計を済ませ、
店を出る。いつもどーり、店が並んでいる。
私は社の方向へ歩く。そして暫くすると足が止まる。ん?なになに?「良く当たる!星座占い」
だと?
ふーん?
私は、自然と古本屋の外に置いてある棚の方向に
方向転換して歩く。
歩きながら、その本のサブタイトルを読む。
「この本で貴方の全てが分かります!」
嘘臭い。
いつの間にか棚に到着して、本を手に取る。
私が本を開いて自分の星座だけ見ようとすると、
新聞をまとめる紐のようなもので、止められていて、本が開けない。
最近はこんな対策されてるのか!
周りの人の目とついでに店の中に居る店員とも目があった。。
買うか。
私はちゃんと買いますよと言うように、堂々と歩いて店の中に入って、レジ前に置く。
ピッ!と、レジに通されて、代金が表示される。
2700円!?たっか!たかが占いでしょ?!
私は泣く泣く1000円札を三枚出し、300円のお釣りを貰う。
こんなことなら、社でインスタントコーヒー飲めばよかった!もったいない!
私は占いは信じない。「見るだけ」なのだ。
幽霊は信じないが怖い話は好きみたいな感じだ
私はとぼとぼと歩いて今度こそ社に向かって歩いた。
せめてこの本は同僚と楽しみながら読むとしよう。
社に付いた。
私はさっそく、その本が詐欺なのか確かめるべく、
紐をはずし、私の星座のページを開く。
ええっと?
「貴方は正義感が、人一倍優れているでしょう。
町中で困っている人がいたら、助けられずには居られない貴方!貴方は人を優先してしまうため、自分が疎かになっていませんか?そんな時は!黄色の帽子を身に付けると良いでしょう!」
……。こんな高い星座占いを買う純粋な良い子は信じてしまうかもしれないが、誰にでも当てはまるようになってるな。
他のページも見てみるか。
ちょうどそこに居た忙しそうな同僚に星座を聞いて、その星座のページを開く。
…同じようなことが書かれている
やっぱ詐欺か。
酷いなぁ。こんな高いのにさあー!
私は手を伸ばして机にへばりつく。
そんな中忙しい筈なのに、平和な会話が聞こえてきた。
「今日って蟹座が綺麗に見えるんですってねぇ!」
「へぇ!そうなんですね!」
ふーん蟹座ねぇ。
私は蟹座だ。
タイミングが良いなぁ。
なんて考えながら、星とか見るのは好きだから
今日の夜の予定が無いか思いだしていた。
そうだ。星座なんて関係ない何月生まれだからあの星だとか、今考えたら意味不明だ。
嫌な事なんて全部忘れて、
今日の夜、綺麗な星座が見られると良いな。
お題/星座