薄墨

Open App
8/19/2025, 12:25:03 AM

足音が、
近づいてくる
足音が、
ゆっくり、
ゆっくり、
確実に。

遠い暗闇の中から、
ゆっくり、
ゆっくり、
一歩、
一歩、
確実に。

近づいてくる…
近づいてくる!
ひた
ひた
ひた
ひた

かつ
かつ
かつ
かつ

私の足音
じゃない足音
近づいてくる
遠い暗闇の中から
ゆっくり、
ゆっくり、
一歩、
一歩、
確実に

8/17/2025, 2:45:17 PM

焦げるような日差しが、地面を焼いている。
ずっと先に誰かいる。
道はまっすぐ続いている。

足を踏み入れたくなるほど、丁寧に整備された鮮やかな道だった。
太陽の下で枝を伸ばしている木々の末端に茂る葉が、意味もなくざわめいている。
蝉の、うるさいくらいかしましい大合唱が、誘うように響きわたる。

一歩を踏み出したくなる心根を、じっとこらえる。
この夏の中に踏み出すことこそ、まだ正体すら分からない奴らの思う壺なのだ。

いくら、数年前に消えてしまった夏という季節が恋しくとも、目の前の、額縁の向こうに広がる、あの夏には、足を踏み入れてはいけない。

入ったら最期、終わらない夏に囚われ続けるのだから。

私の役目は、感情のまま、この終わらない夏に囚われることではない。
私の役目は、冷静に論理的に、この終わらない夏を研究し、管理することなのだから。

焦げるような日差しが、地面を焼いている。
ずっと先に、黒い人影が立っている。
道はまっすぐ続いている。

蝉が、誘うように鳴きわめいている。

8/16/2025, 2:45:27 PM

片道の 燃料乗せて 朝焼けを
 遠くの空へ 遠くの空へ

仰ぎ見て けぶり揺れる ひとり寝屋
 気持ちだけ今 遠くの空へ

茄子の脚 ふんばり立ちゆる 縁側で
 遠くの空へ そっと手を振る

8/16/2025, 2:48:53 AM

「大空に!!」 焦がれた気持ちは 激しくて
 !マークじゃ 足りない感情

8/14/2025, 11:20:47 PM

鮮やかな色が、視界を汚染している。
空は青くて、木々は茶色で、葉っぱは緑で。
子どもがクレヨンで描いた絵のようなべったりした原色の色彩が、私の視界を汚染している。

君が見た景色もこういうものであったのだ、ということが、私には今、初めて分かった。

君が、「見える色が変」と言い出したのは、半年前のことだった。
色が絵画のようになってしまった、なんて。
それがまさか本当に起こる現象だなんて、信じられなかった。

君はいつも悩んでいた。
他の人とは違う色彩が見えることを。
誰にも自分の視界に起きていることを信じてもらえないことを。
そして、この色彩が他の誰かに移ってしまうに違いないということを。

そうして、ある夏の日、君はいなくなった。
私の前から姿を消し、君を知っていた人々の前からもまた、姿を消した。

君がいなくなってから、私の視界も、あの色彩に汚されるようになった。
君がいなくなってから初めて、私は、君が見た景色を、初めて理解したのだった。

空は、クレヨンのように真っ青で、木々はべったりとした茶色に塗りたくられている。
クレヨンで描いたようなべったりした色彩が、私の視界を汚している。

Next