鮮やかな色が、視界を汚染している。
空は青くて、木々は茶色で、葉っぱは緑で。
子どもがクレヨンで描いた絵のようなべったりした原色の色彩が、私の視界を汚染している。
君が見た景色もこういうものであったのだ、ということが、私には今、初めて分かった。
君が、「見える色が変」と言い出したのは、半年前のことだった。
色が絵画のようになってしまった、なんて。
それがまさか本当に起こる現象だなんて、信じられなかった。
君はいつも悩んでいた。
他の人とは違う色彩が見えることを。
誰にも自分の視界に起きていることを信じてもらえないことを。
そして、この色彩が他の誰かに移ってしまうに違いないということを。
そうして、ある夏の日、君はいなくなった。
私の前から姿を消し、君を知っていた人々の前からもまた、姿を消した。
君がいなくなってから、私の視界も、あの色彩に汚されるようになった。
君がいなくなってから初めて、私は、君が見た景色を、初めて理解したのだった。
空は、クレヨンのように真っ青で、木々はべったりとした茶色に塗りたくられている。
クレヨンで描いたようなべったりした色彩が、私の視界を汚している。
8/14/2025, 11:20:47 PM