「sunrise」「sunrise」と聞き、振り向けば
隣のホームに 特急が着き
朝陽君 「My name is sunrise」
おどけて話し、ぎこちなく笑われ
スカッとした青空が、どうしようもなくうるさい時は
人肌ほどにあたためたゼラチンを溶かして、
爽やかなゼリーにして
食べてしまおう
どよんとした灰色の空が、どうしようもなく重たい時は
さらっさらの漂白剤を溶かして、
新品みたいに洗濯して
アイロンをかけよう
何もかも嫌になって、どうしようもなく疲れた時は
ただ静かに地べたに寝転んで、
腕をまっすぐ垂直に上げて
空に溶けよう
When the sky is too blue
We make bule sky jelly,
The gelatin dissolve in sky
And eating
When the sky is too ashen
We wash ashe sky,
The bleach dissolve in sky
And ironing
When you are tired and gloom
We throw ourself down earth's surface
Reach our arms for the sky
Like our body dissolve in sky
「どうしても…」 食い下がる空 蝉の声
こういうときに「まって」と思ってしまうのは、僕たち子供の本能なのだと思う。
今日の作戦の終了間際にも、リーダーにすがりつく、遺された子供が何人もいる。
僕たちが村の“奪還”を命令されるのは、これが最初じゃない。
重たすぎる装備を担いで、略奪と虐殺を繰り返すこの奪還作戦は、非力で経験不足の僕ら少年兵部隊の仕事だった。
村に残っている大人たちを、銃やらなんやらを使って、追い立てて、食糧やら物品やらを押収して、最後に証拠を隠滅する。
それが僕たちの仕事だ。
そして僕たちも、そういう、少年兵が“奪還”した村の子供だった。
親や信頼できる大人やちょっといけすかない、でも確かに僕たちの仲間だった大人を殺した少年兵部隊たちに、僕たちは加わった。
そんな敵に与するようなこと、なんでするんだ、と大人たちは思うかもしれない。
でも仕方ないのだ。
子供の本能でどうしようもないのだ。
僕は、僕の村が“奪還”された夜、僕がこの集団に加わることになったあの夜のことを、まだはっきり覚えてる。
あの日、火と血にまみれた村の中で、頼れる大人たちはみんな、何も言わずに横たわっていた。
僕の村の大人たちを殺したであろう、兵たちは、物品を見繕って、淡々と荷物をまとめ、立ち去ろうとしていた。
その時、真っ先に僕の頭に浮かんで、それから脳の中を埋め尽くした感情は、怒りではなくて、焦りだった。
このままじゃ、置いて行かれてしまう。大人も、頼れるものも何もいない、何者にもなれないこの静かなだけの村に。
置いて行かれてしまう。
それが本当に怖かった。
怖かった。
僕の口からこぼれ落ちたのは、力無い「まって」だった。
これが映画や漫画の世界なら、きっと、「待て」とか「なんで殺した?」とか「絶対仇をとってやる!」とか勇ましい、怒りのセリフであったはずだけど。
僕の口から出たのは、「まって」だった。
僕は子供らしく、子供の本能から、敵なのに、ひどいのに、それでも強そうな、ちょっと歳上なだけの、目の暗い少年兵たちにすがりついたんだ。
それから、今までいろんな村を“奪還”しに行ったけど、どの村の子供も、少年兵に「まって」と縋りつく。
ほとんどの子供が。
そして、そういう子供たちで、僕たちは数を増やしてきたのだった。
リーダーが、村に遺されて縋りついてきた子供たちに、対応している。
「ついてこい」そういう身振りで、新たな少年兵たちを増やしていく。
少年兵になった僕たちが、奪還した村の子供たちを救う方法は、これしかないから。
自分の仲間にしてしまう他に、僕たちが、大人に、世界に対して出来ることなんて、ないから。
僕たちは荷物をまとめ、「まって」と口に出した子供らしい仲間たちの数を数えて、点呼を取る。
そろそろ撤退の時間だ。
東の空が白み始めている。
僕たちは行軍を始める。
戦利品と新たな仲間を連れた、虚しい行軍を。
「裸足でアザミを踏んづける!」
そんな言い回しを教科書で習ったのは、いつだったろう。
そんな言い回しが当てはまるような状況に、この歳でぶつかるとは思っていなかった。
新しい星が見つかった。
新種の生き物がたくさん息づいていた。
私の入った会社が部署が発見したその星には、我々がまだ知らない世界が広がっていた。
そんな所への探索なんて、いったい誰がしたいというのだろう。
否、いるのだ。
例えば、権力と資産を欲しいままにし、残りの寿命を持て余したボンボンとか。
例えば、死よりも好奇心と冒険心に靡いてしまうどうしようもないバカなのに、人員を動かせる力を持ったやつとか。
例えば、うちの上司とか。
上司の立候補で、うちの部署がその、まだ誰も知らない世界へ踏み込むことになってしまったのだ。
なんたることだ。
「裸足でアザミを踏んづける」なんて、痛い失敗に決まっている。
綺麗な花に反して鋭い棘が、足を貫いて、大惨事になるのは自明の理ではないか。
それでも、うちのバカで、愛らしくて、どうしようもない上司とそれらを尊敬するバカどもは、新星に、誰もまだ知らない世界にどうしようもない憧れと、無謀な希望を抱いて、アザミを踏んづけようとするのだ。
まだ知らない世界へ…。
だから、私も行くことを決めた。
救いようのないバカどもだけでは、すぐに全滅がオチだからだ。
私は明日から、新星へいく。
まだ知らない世界へ行く。
バカたちと一緒に。
バカなことと分かっていながら、アザミを踏んづけに行く。
私も大概バカなのかもね。
一人ごちた言葉を、風が何処かへ攫っていった。