一刻の 美を永遠に 留めたく
接木の桜も 君撮る我も
一刻の 美も永遠に 生かしたく
接木の桜も 文字を書く吾も
なっちゃった。
なっちゃったんだよ。怪物に。
君と。
君と。
君と。
君と。
骨はドロドロ溶け合って。
肉はくちゃくちゃ混じり合って。
組織はぐるぐる一緒になって。
なっちゃった。
なっちゃったんだよ。怪物に。
君と。
君と。
君と。
君と。
怪物になれって呪いが、
世界中の空気に囁いて、
身体を溶かして、
脳を混ぜて、
怪獣に
なっちゃうの。
なっちゃうんだよ。怪物に。
君も。
君も。
君も。
君も。
I will became
I will be monster
and you
and you
and you
and you
The bornes fuse together
The meeles mix together
The blood intertwine together
I has became
I has became monster
and you
and you
and you
and you
A curse to became monster
whisper to the world
It melt our bodyes
It mix our braines
Became a monster
I'll became
I'll became monster
and you
and you
and you
and you
空に向かって手を伸ばす。
今日の空は、青い。ぐにゃぐにゃの寒天みたいな空だ。
空の上から伸ばした手は、ぐにゃりと吸い込まれるように空に沈む。
引き込まれるように、身を乗り出す。
青い空がぐにゃりと蠢く。
私の職場は、確かに硬さのあるこの空を飛ぶ船だ。
国から国へ、港から港へ、商品を運ぶ輸送船。
障害物のない空の上、船腹につけられたオールが、ぐにゃぐにゃの空を掻き回しながら前に進む。
そんな空船の船員を、私はしている。
私はこの空船のデッキから、空を覗きこむのが好きだ。
オールでかけるほど確かに形がありながら、いつもどんな時もあってないような慎ましさの空が、不思議で、好きだから。
船から見る空は本当に遠くて、吸い込まれそうなくらいに美しく、好きだ。
そして、空に手をつけるのももっと好きだ。
空は永遠に深く続いていて、底がしれない。
そんな不思議な感触を、手で味わうのが好きなのだ。
だから、今日の休憩時間にもここに来た。
そうして、吸い込まれそうな空に向かって手を伸ばす。
底は見えない。
地上も遥か遠くだ。
青い空が、手を沈めていく。
美しい、なんとなくひんやりとした空に手を浸していると、なんだか体も浸したくなる。
それをなけなしの理性と現実で留めて、私はいつも目を輝かせながら、果てしない空の底を覗き込む。
いつもは空に飛び込んで、身体中を空に浸そうなんて、思わない。
空の底は見たいけど。
空に身体を浸せば、重力で、空の底のずっと前にある地上に叩きつけられるだけだと分かっていたから。
だから、私はデッキの上で、せいぜい空に向かって手を伸ばす、くらいのことしかしてこなかった。
今日もそのつもりだった。
私は空に手を浸しながら、休憩明けのことを考えていた。
その時、船内に続く船デッキのドアが、勢いよく開いた。
雪崩れ込むように、一人の商品が、船デッキに走り込んできた。
商品は、体に垢と傷をこびりつけた、見窄らしいその全身に、怯えと焦りと恐怖の感情を貼り付けて、青ざめた。
私の顔を見て、デッキの手すりを見て、空を見た。
そして、彼は、飛んだ。
空に向かって。
両手を広げて。
青い、深い、果てしない空が、彼をあっという間に呑み込んだ。
空は、彼が飛び込んだその一瞬、その一部だけざわめかせて、彼を包み込んだ。
…あとは静かな、元の凪いだ空が残っていた。
青い、青い。
逼迫した何かが込み上げた。
切ない空への憧れが、無責任にも私の背を押した。
私は。
私は。
私は、空に向かって手を伸ばした。
空に向かって肩を伸ばした。
空に向かって身を乗り出した。
空に向かって足を踏み出した。
まずは上半身を、続いて腰を、続いて足を、爪先を。
空に向かって投げ出して、空に向かって乗り出した。
きっと、飛び込み姿勢は美しくとれたとおもう。
細く伸びた私の全身は、するん、と、ほとんど抵抗なく、空に落ちた。
恐ろしいほど早い落下の中で、全身は空に浸っていた。
全身が、風を切って空の深みへ、真っ逆さまに沈んでいく。
私は幸せだった。
身体は、ゆっくり、でも十分な速さで、私を空の底へ、底へと沈めていった。
火花が散って、はじめて目があった。
お互いに、その一瞬で立ちすくんだ。
草むらの中から顔を出した、少し下の方にある、丸い見上げるその眼が、「はじめまして」と告げているような気がした。
だから私は手を差し伸べたのだ。
はじめまして、そう返すために。
今まで数々の生き物を拾ってきたけれど、ニンゲンを拾ったのは初めてだった。
かつてこの星を統べていたというこの生物は、私たちよりも少し小さく、私たちよりずっと賢く、かわいらしい。
ニンゲンは、同種同士でとても仲がよい。
どんな仲間とも“会話”というものを試みようとするし、生殖活動を行うのにさえ、もう一人のニンゲンを必要とする。
ニンゲンは、賢い。
同種の個体差のみならず、他の生物や私たちの個体差も見分け、覚え、記憶に基づいて反応する。
そして、私たちとさえコンタクトをとろうとする。
ニンゲンは、かわいい。
話したり、構ったりすれば、大抵のニンゲンはこっちをじっと見つめてくれる。
私たちより少し小さいくらいだが、電子操作などを生身で使うことはできず、体と脳を目一杯動かして、道具などで一生懸命に生きる。
そしてなによりニンゲンは、生命活動で環境を汚染したりしない。
ニンゲンは、植物に必要な二酸化炭素を吐くし、排出するのも食べるものも全て有機物で、汚染物質ではない。
だから、ニンゲンは、私たちの種族の中では、一定の人気がある。
かわいらしく、賢く、一途で環境にも優しいニンゲンは、今や私たちのパートナーだった。
しかし、私たちの種族の中には、ニンゲンに酷いことをするものもいる。
そういう時、ニンゲンはその不自由な体を必死に使って逃げ出したりする。
また、はぐれてしまうニンゲンもいる。
そういうニンゲンは野良となって、文明という群れを作って、ニンゲンだけで生き抜いているという。
なんとも健気でかわいらしくて、悲しい話だ。
私があったこのニンゲンも、野良のようだった。
文明に所属しているようにも、飼い主がいるようにも見えなかった。
私と目を合わせたニンゲンは、とても痩せていたし、道具を持っていない手ぶらだった。
そして、そのニンゲンは、警戒しながらも私に挨拶をした。
愛くるしい目で。声で。
はじめまして、と。
だから、私はこのニンゲンを保護することに決めた。
しかし、ニンゲンはナイーブだ。
野良ニンゲンや捨てニンゲンを保護するにはまず、ニンゲンに慣れてもらい、友達になる必要がある。
この作業を、「友情を育む」というらしい。
だから、私はまず、挨拶を返すことにしたのだ。
「はじめまして」
ニンゲンが笑った。
うそつき、と。
私は口の中で呟きました。
あなたはあの日、「またね!」と言いました。
確かに。
だから、私はもう一度会えると信じていました。
幼い私は、純粋にも「また」が言葉通りまたあるものだと、信じていたのでした。
空も海も透明に凪いでいて、春のぬるい温度がすうっと抜けています。
春特有の、霞がかってちょっとぼんやりした空気の中で、私は深呼吸をしました。
あなたが私に「またね!」と笑いかけていたあの時も、この今日の春と同じように、境界のないぬるい、なあなあな長閑な空気の中だった、と、私の記憶がささやきます。
だから、私はうそつき、と口篭ったのでした。
あなたが私の前から消えたのは、もうずいぶん前のことでした。
あなたはいつもの通りに笑顔で、いつも「バイバイ」と別れを告げるような口ぶりで「またね!」と。
そう言って手を振ったのでした。
私は、あなたが初めて、別れの言葉で次を確約するようなものを選んだことに、気づいて驚いて、それで本当に嬉しくて、満ち足りた気分であなたを送り出したのでした。
それがここまでの別れとなることを知らずに。
私は、あなたを返してしまったのでした。
あれから、月日は巡り、年は経ち、
春が夏になって、夏が秋になって、秋は冬になりました。
私もずいぶん大きくなって、あなたの力を借りなくても楽しく過ごせるようになって、最初の数週間みたいに、あなただけをずっと待っていることも無くなりました。
あの当時、私にはどうしてとても重かったあなたへの秘密。
たった一つ持つだけで、お母さんについた嘘よりずっと私の心に重たかった、あなたへの秘密。
それも今ではたくさん増えて、なのに私の心には、ほんの綿毛ほどの重さももたらさずに、今も増え続けているのです。
あなたを待つ間に、私はすっかり大きくなりました。
あの時は口内炎をかすめるトマトより口を通るのが辛かった、あなたへの悪口も、今ではあまりに容易く口まで込み上げるので、堪えることに難儀するほどです。
それでも、私は、私はまだ、あなたを待っている気がします。
つい最近、ひどい風邪に悩まされながら悪夢を見た時も、私はつい、あなたに助けを求めてしまいました。
うそつきで、まだ帰ってきていなくて、きっと戻ってこない。
そう分かっていても、私は譫言で、あなたを呼んでしまった。
あなたが家から運び出される時、あなたはいつものように笑って私に手を振りました。
またね!
って。
あなたはまだ帰ってきません。
あなたの「また」はいつだったのでしょう。
うそつき、私は口の中であなたに呟きます。
今、ここは春です。
霞がかったぬるい空気が満ちています。
あなたの「また」はあるのでしょうか?
私はまだ、まだ、ほんのひとかけらだけ信じています。
あなたのまたね!を。