生まれた環境も、生きてきた年月も全然違うけれど、私たちはこうしてちゃんと巡り会えてる。これって奇跡じゃないかな。お互いの名前すら知らないけどそこから始まる物語もきっとある。そう信じてるよ。君となら唯一無二の関係になれると思ってる。
ふふふ。あなたとわたしが巡り会えた奇跡に乾杯!!
zene
今日私は失恋した。大好きな先輩が私の親友に告白しているところを見てしまったのだ。私は憂鬱な気持ちになりながら下駄箱を出た。そうしてとぼとぼと家路に向かっているときだった。
ぽつ、ぽつと何かが降ってきた。雨だと気づいた時にはもう遅かった。慌てて傘を探すが、見当たらない。仕方ないと私は走り出した。雫が背中を伝ってくる。それは優しい、優しい雨だった。雫を通じて雨粒の柔らかさが伝わってくる。慰めようとしてくれてるのかな。そう思うと心がふっと暖かくなったように感じた。今日は思いっきり遠回りをしよう。たくさん濡れてから帰ろう。そう私は心に決めた。
zene
真っ暗な闇の中で私は夢を見た。君が救ってくれる夢。それは私にとって一筋の光みたいでー。とっても眩しかった。けれど、手を伸ばしても君には届かない。当然、届くはずもない。そんなこと誰よりわかっているのに淡い期待を抱いてしまう。いっそのこともうこのまま堕ちてしまおうか。深く、深くもっと深いところまで堕ちて誰にも見つからないままひっそりと死んでしまおうか。そんなことさえ思った。
それでも手を伸ばし続けた。そして彼が一瞬こちらを見たのだ。もっと彼を見たい。そう思う少女の気持ちとは裏腹に体はどんどん沈んでいく。「時間切れだよ」しわがれた声が脳に響く。ああ、そっか。ここまでなんだ。少女は悲しげに自分から沈んでいった。
これはとある人魚の話。彼女は誰にも愛されることなく、静かに沈んでいった。
たった一つの光さえ見つけられないまま。
zene
今日もあなたはいない。この世界のどこを探してもあなたはいない。ついこの間まで一緒にいたのに。私はうつろな瞳で窓の外を見た。そこには私の心を慰めるかのように鮮やかな紅葉が広がっていた。当然、そんなものでは癒されるはずなどないのだけれど。私はあなたの手首を強く抱きしめた。今日こそ埋葬しなきゃなとうっすら思いつつ、死体に近寄る。そして、おそらく最後の接吻を交わした。かつて自分が殺した恋人に。
zene
私は鏡が嫌いだ。なぜなら現実を突きつけられるから。いくらSNSで輪郭を形どっても、自分は変わらない。私は鏡を見るのがとても怖い。そして何よりも辛いのだ。私は鏡を思いっきり床に投げつけた。割れた鏡の破片が顔に突き刺さる。ああ、良かった。これで私は鏡を見ずにいられる。これからは自由なんだ。容姿に囚われることなく、生きていける。これでよかったんだ。私は苦痛に顔を歪めながら最後の自撮りを撮った。
zene