真っ暗な闇の中で私は夢を見た。君が救ってくれる夢。それは私にとって一筋の光みたいでー。とっても眩しかった。けれど、手を伸ばしても君には届かない。当然、届くはずもない。そんなこと誰よりわかっているのに淡い期待を抱いてしまう。いっそのこともうこのまま堕ちてしまおうか。深く、深くもっと深いところまで堕ちて誰にも見つからないままひっそりと死んでしまおうか。そんなことさえ思った。
それでも手を伸ばし続けた。そして彼が一瞬こちらを見たのだ。もっと彼を見たい。そう思う少女の気持ちとは裏腹に体はどんどん沈んでいく。「時間切れだよ」しわがれた声が脳に響く。ああ、そっか。ここまでなんだ。少女は悲しげに自分から沈んでいった。
これはとある人魚の話。彼女は誰にも愛されることなく、静かに沈んでいった。
たった一つの光さえ見つけられないまま。
zene
11/5/2024, 12:38:36 PM