冬になったらきっと私は消えてしまう。だからその時まで頑張って粘ってきたけど、もう限界なのかもしれない。
冬が来るのが怖くて怖くて仕方ない。けれどこれは私に与えられた宿命なのだ。私は
この宿命に立ち向かわなければならない。私は奥歯をぎゅっと噛み締めた。もう覚悟は出来ている。きっと大丈夫だ。春が来ればまた私の時期がやってくるのだ。そう思うといくらか心が軽くなった。
私が満開の時は人々はたくさん見にきてくれた。しかし、冬になると人々は目もくれない。私はそれが怖かった。そう、私は人々に忘れられてしまうのが何よりも嫌だった。
あんなに満開だった花びらも今ではすっかり朽ち果ててしまっている。
空では綺麗な花びらの代わりに雪がしとしとと静かに降っている。
zene
飛べない翼はいらない。だって大空に羽ばたくのを夢見て羽を広げたのに。他の仲間たちはあんなに綺麗に舞っているのに。いっつも僕だけ仲間はずれ。もう、やだよ。こんなことになるくらいなら最初から翼なんていらなかった。神様はどうして僕にこんなものを送ったの。僕だって大空を自由に飛び回りたいよ。なのに、なんで。神様は意地悪だ。僕にこんな理不尽なものを贈るなんて。少年の顔から涙が溢れた。
ペンギンは飛べない翼を床につけてうなだれていた。
これはとある水族館のペンギンの話。
ペンギンは今日も翼を広げて飛ぶ練習をする。
大空を夢見て。
zene
いくらたくさんの富を持っていたとしても、たくさんの人の愛されたとしても、それらは全て死んでしまえば意味を成さない。しかし、本当にそうだろうか。たくさんの富を持っていたらあの世で神様に認められるかもしれない。たくさんの人に愛されて死んだのなら、あの世でも周りに人が集まって来るかもしれない。小さな努力だっていつかは結果に繋がるかもしれない。つまるところ「無意味なこと」というのは人生においてほとんどないのだ。人生はまだ長い。きっと人生のうちで何度も怠けることはこれからもあるだろう。だが、それは「怠惰」などでは決してないということを覚えておいて欲しい。
zene
生まれた環境も、生きてきた年月も全然違うけれど、私たちはこうしてちゃんと巡り会えてる。これって奇跡じゃないかな。お互いの名前すら知らないけどそこから始まる物語もきっとある。そう信じてるよ。君となら唯一無二の関係になれると思ってる。
ふふふ。あなたとわたしが巡り会えた奇跡に乾杯!!
zene
今日私は失恋した。大好きな先輩が私の親友に告白しているところを見てしまったのだ。私は憂鬱な気持ちになりながら下駄箱を出た。そうしてとぼとぼと家路に向かっているときだった。
ぽつ、ぽつと何かが降ってきた。雨だと気づいた時にはもう遅かった。慌てて傘を探すが、見当たらない。仕方ないと私は走り出した。雫が背中を伝ってくる。それは優しい、優しい雨だった。雫を通じて雨粒の柔らかさが伝わってくる。慰めようとしてくれてるのかな。そう思うと心がふっと暖かくなったように感じた。今日は思いっきり遠回りをしよう。たくさん濡れてから帰ろう。そう私は心に決めた。
zene