zene

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ぽっと朧気な灯火が灯る。人々はえりに首をうずくめて、足早に通り過ぎて行く。そんな中、1人だけ時が止まったかのようにぽつりと立ちすくむ少女がいた。たった1人、不自然なまでに突っ立っているその様子はそこだけまるで異次元のようだ。しかしそんな少女には誰も見向きもしない。否、見えないのだ。誰も少女を見ることは出来ない。
淡雪がしんしんと降ってくる。今年も冬がやってきた。「来ーたよ♪」少女は嬉しそうに雪を降らす。少女の正体はなんと冬の精霊だったのだ。
少女がくるくるとステップをふむとたちまち灯火が道にやどる。それは初雪を告げる暖かな、眩しい冬の光だった。

zene

11/29/2024, 12:50:54 PM