※ポエム注意
「夏」
ざわざわざわ 話し声に
春の出会い想う
ざわざわざわ 風が吹いて
春の涼しさ想う
踏み出す足 慣れない靴
手を伸ばして君に触れそうになる
あと少し 君の髪がなびく
笑っていて
どうか 君の顔見えないとしても
笑っていて
どうか 君はずっと幸せでいてよ
ずっとずっとずっと 止まないまま
梅雨の雨を思う
ずっとずっとずっと 耳に痛い
君の叫び聞いた
ああ 届かなかった
夏がくるまでに
私はあなたのもとへ行けなかった
ああ……ああ!
踏み出す足 慣れない靴
走ってもう君に触れられなくて
もうずっと 遠い後ろ姿
笑っていて
どうか あなたがもう見えないとしても
笑っていて
どうか 君にはいつか届いてほしいんだ
※注意事項
今回百合要素のないポエムでごめんなさい
CPではなく双子想定で書きましたが、お好きなように想像して楽しんでください
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「どこにも行かないで」
追いかける朝焼け
照らされる重ねた手のひら
踏み出す足が止まった
眼の前に陽射しが現れたんだ
どこからここまで来ちゃったんだっけ
同じこと口から溢れて笑った
走り出すにしたってこの先なんか見えない
君の隣ってことだけが変わらない
同じ視線が貫いた
この先まっすぐ――見える
気付いた明日は綺麗なんかじゃないけど
僕は止まらない
君も止まれない
だけど置いていかれやしないさどこまでだって
同じ視線が貫いた
朝焼けと同じようにまっすぐ貫いて見た
【百合注意】
風が吹き、薄荷の匂いが漂ってきた。
草花は芽吹き、吹く風もすっかり暖かく肌をくすぐるようになったのだ。
今日は学園の入学式。
なにか、いいことがあるといいな。
校長先生は、式辞で「みなさんの学園生活が実りあるものになりますように」なんて、ありきたりな言葉で締めていたけど、きっと、そう、きっとめいっぱい充実した学園生活にするんだ!
まずは、寮の歓迎会。
楽しんで、それで、お友だちを作るんだ!
寮の門の左右に立つ高い柱は、造花で綺麗に飾り付けられていた。
寮に入る前に、私はそれを眺めた。
とても綺麗だと思った。
そうしていると、誰かの声が聞こえてきたのだ。
「それ、私が飾ったのよ。どう?綺麗にできているかしら?正直、上手くできたか不安なのよ。」
透き通った、綺麗な声だった。
振り返るとまず、風になびく綺麗な茶色の髪が目に入った。
目が大きくて、すごい美人だな、と私は呆気に取られた。
私は彼女の綺麗な髪を眺めながら、質問に答えた。
「はい。綺麗な花だと……思います。色が、すごく綺麗です。」
「私一人で飾るのは大変だったけど、そう言ってもらえると報われるわ。だって、私一人で飾ったんだもの。私一人が褒められているってことよね。」
彼女は、自信に満ち溢れているようだった。
先輩だからなのだろうか。
自信に満ち溢れているだけでなく、彼女は自分よりもすごく大人に見えた。
「あの、よかったら、歓迎会……一緒に回りませんか?」
歓迎会のブースは、簡単なオリエンテーションの後、好きなところを自由に回ってもよいことになっている。
それをこの人と回りたい、と思った。
その気持ちが恥ずかしさとか、遠慮とか、そういう気持ち全てをかき消した。
私は勇気を出して、誘ってみた。
「いいわよ。」
了承の返事をもらえた嬉しさに、声が上ずる。
それでもなるべく大きな声で返事をしたから、届いたはずだ。
「はい!とても嬉しいです!」
この歓迎会で、お友だちだけじゃなくて、彼女もできたらいいな、と思った。
【百合、バッドエンド注意】
私は昔から、「運命の人に会いたい」と願っていたような気がする。
なのに、誰かを好きになるということが一度もなかった。
そのうち、好きになる相手が現れるだろう、運命の相手に出会っていないだけだと信じていた。
今日から私は、社会人になる。
結局、大人になっても運命の相手は現れないまま。
そもそも、恋愛小説などは好きではないので、運命の相手というものが何かさえおぼろげなのだが。
今日は簡単な業務についての説明のあと、会社の飲み会があるらしい。
きっと今夜は疲れて眠ってしまう。
今日も運命の出会いなどないのだろう。
暑い。
4月の夜なのに、暑い。
着慣れないスーツと履き慣れないヒールのせいだろうか。
あとは、たしかお酒を飲んだ。
そのせいもあるのだろうか。
涼しいところへ行きたいが、ここは一体どこなのだろう。
お酒を飲んだことは覚えているのだが、その後の記憶がない。
会社に指定された無駄におしゃれな店の前にいるのだから、もう飲み会は終わったのだろう。
時計を確認すると0時を回っていた。
家に帰らなければ。
就職する前に住んでいた田舎にはなかった、駅というものまで歩いて、乗る電車も……わかる。
よし、酔っ払ってはいるけれど、帰れるな。
まっすぐ歩けているかどうかは不安だけれど、とにかく駅まで歩いた。
とにかく駅に入ることができた。
改札まであと数歩。
が、そう思った次の瞬間、視界が斜めに傾いた。
倒れたのか、と気づくまでに、おそらくは十数秒を要した。
まずい、深夜故に人は少ないものの、駅員さんに迷惑だ。
「あの、大丈夫ですか?」
ドキリとした。
酔っぱらいが迷惑をかけて、申し訳ない。
しかも若い、綺麗な女の人だ。
酔っ払っているせいで歪んで見えるその顔は、なぜかきらきらと輝いて見えた。
「飲みすぎました……。ここまで来られたので、あとは大丈夫だと思います。ご迷惑おかけしてすみません……。」
「よかったら、家まで送りますよ。」
そんな迷惑をかける訳にはいかない。
そう言葉にしようとしたら、次の言葉が飛んできて酔いも醒めるような心地がした。
「私、帰る場所がないので代わりに泊めていただけると嬉しいです。介抱もしますので。」
帰る場所がない?
どういうことだろう。
そう思ったものの、聞く余裕はなかった。
私は諦めて、この若い女の人に着いていくことにした。
眩しい。
頭が痛い。
確か、飲みすぎて――
「おはようございます。泊めていただきありがとうございます。」
美人だなあ。
う、頭が。
「水だけでも飲んでください。家に薬などはありますか?」
「飲み過ぎるつもりではなかったのでありません……。」
「何か買って来ましょうか?お金はありませんが……。」
「今日は、オンラインで講習を受けるだけなので、休めば大丈夫です。ありがとうございます。」
ところで、この女性は帰る場所もお金もないと言うが、一体どういうことなのだろう。
事情を聞いてもいいのだろうか。
疑問には思うが、言葉はするりと出てきてしまった。
「あの、帰る場所がないとは、一体どういうことですか?」
「あ、すみません、事情も話さず。私、高校を卒業してすぐに嫁いだ身ですが、その、旦那の暴力が凄くて。あなたは酔っ払っていても殴って来ないので、安心しました。」
えぇ。
暴力って、警察に通報するべきなのではないか。
「警察に通報しても駄目なんです。旦那は、警察と繋がりがあるようで、私の虚言としか見てもらえなくて。」
えぇ。
掠れた声で語る彼女の言葉を聞くと、思った以上にまずい状況のようだ。
「これから、どうするつもりですか。」
衝撃は大きかったが、また、言葉はすぐに出た。
この人のために何かできないだろうかと思った。
「しばらく、匿っていただけませんか。」
「そのあとは、どうするつもりですか?外に出るのも危ないのでは?」
「……」
黙り込んでしまった。
私にできることはないのだろうか。
遠くへ引っ越す?
それが一番現実的だろうが、お金をどう工面するのかが問題になる。
それなのに、またも言葉は考えるより先に出てきた。
「遠くに引っ越すお金が溜まったら、貸します。」
「ごめんなさい……あなたに頼るしか今はないかもしれません……。」
なぜだか嬉しく感じた。
それも、あなたに頼るしか、という部分を聞いたときに。
「私も助けていただいた身ですし。あのとき、倒れたままだったらどうなっていたか。」
こうして、ちょうど2週間が経った。
彼女は家事を手伝ってくれて、このアパートにいる。
家事をしなくてよいというのは、本当に楽だ。
助けるというより、助けてもらってばかりだ。
会社に行こうと玄関に立つと、ちょうどインターホンが鳴った。
そのまま、チェーンロックを掛けてドアを開ける。
「妻を出せ。隠しているんだろう、あ?」
は?
「出せよ。」
「出せって言ってるだろ。」
大柄な一人の男だった。
私は固まってしまったが、男は同じ調子で怒鳴り続ける。
「出てこいよ、愛紬。」
「はい。」
部屋から、あの女の人が出てきた。
そういえば、愛紬は、彼女の名前だ。
私は気が動転しているようで気づかなかった。
「人に迷惑かけたんだろ。謝れよ。おい。」
男は彼女の髪を掴んで引っ張る。
「申し訳ございません……。」
そのまま、彼女は連れて行かれてしまった。
衝撃だった。
止めることもできなかった。
彼女は、これからどうするのだろう……。
私は、泣きながら会社を休む連絡を入れた。
私は今まで、誰も好きにならなかったのは、運命の人に出会っていないだけだと思っていた。
しかし、私の運命の人は、彼女だったのだ。
私が好きになる人も、運命の人も、女の人だったのだ。
だから、今までどんな男の人に出会っても好きになることがなかったのだ。
もしも願いが叶うならば、彼女が……どうか、これ以上不幸な目に遭わずに済みますように。
ただ祈るしかない。
私には、彼女を助けてあげられる力はなかったから……。
「苦しい」
そう叫ぶ君には、私の言葉も聞こえてはいない。
それほどの苦しみとは、一体どれだけのものだろう。
想像してわかるものではないと知りつつも、私は苦しむ君を想い、こう考えるのだろう。
「この苦しみの僅かでも、代わってあげることができたら」
と。