【百合注意】
風が吹き、薄荷の匂いが漂ってきた。
草花は芽吹き、吹く風もすっかり暖かく肌をくすぐるようになったのだ。
今日は学園の入学式。
なにか、いいことがあるといいな。
校長先生は、式辞で「みなさんの学園生活が実りあるものになりますように」なんて、ありきたりな言葉で締めていたけど、きっと、そう、きっとめいっぱい充実した学園生活にするんだ!
まずは、寮の歓迎会。
楽しんで、それで、お友だちを作るんだ!
寮の門の左右に立つ高い柱は、造花で綺麗に飾り付けられていた。
寮に入る前に、私はそれを眺めた。
とても綺麗だと思った。
そうしていると、誰かの声が聞こえてきたのだ。
「それ、私が飾ったのよ。どう?綺麗にできているかしら?正直、上手くできたか不安なのよ。」
透き通った、綺麗な声だった。
振り返るとまず、風になびく綺麗な茶色の髪が目に入った。
目が大きくて、すごい美人だな、と私は呆気に取られた。
私は彼女の綺麗な髪を眺めながら、質問に答えた。
「はい。綺麗な花だと……思います。色が、すごく綺麗です。」
「私一人で飾るのは大変だったけど、そう言ってもらえると報われるわ。だって、私一人で飾ったんだもの。私一人が褒められているってことよね。」
彼女は、自信に満ち溢れているようだった。
先輩だからなのだろうか。
自信に満ち溢れているだけでなく、彼女は自分よりもすごく大人に見えた。
「あの、よかったら、歓迎会……一緒に回りませんか?」
歓迎会のブースは、簡単なオリエンテーションの後、好きなところを自由に回ってもよいことになっている。
それをこの人と回りたい、と思った。
その気持ちが恥ずかしさとか、遠慮とか、そういう気持ち全てをかき消した。
私は勇気を出して、誘ってみた。
「いいわよ。」
了承の返事をもらえた嬉しさに、声が上ずる。
それでもなるべく大きな声で返事をしたから、届いたはずだ。
「はい!とても嬉しいです!」
この歓迎会で、お友だちだけじゃなくて、彼女もできたらいいな、と思った。
3/31/2025, 5:18:29 AM