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6/21/2025, 11:04:54 AM

小さいのに自信を背負って、誰よりも背を伸ばして前に進む君の背中を追って、この背中に恋い焦がれて、私の人生は形作られていた。
触れられそうなほどに近づいたそれに手を伸ばした私の頭を、薬指にシルバーが光る君の左手が撫でる。
その背中に私の手が届く頃には、君は私だけの宝物じゃなくなっていた。

君の背中を追って

6/20/2025, 11:14:37 AM

好き、嫌い、やっぱり好き、とくるくる入れ替わる不安定な気持ちにため息が漏れた。
どっちなの、と小さく呟く声は口の中で泡のように溶けていく。
ふと顔を上げた視線の先で、柔らかく微笑むあなたの横顔が私の視界を占領した。
うん、やっぱり好きだったみたい。

好き、嫌い、

6/19/2025, 10:13:47 AM

「え」
小さく驚いたような声が聞こえた。
その声に振り向いてみれば傘を持って少し目を見開いて立っているあなたと目が合う。
大きな雨粒が降り注ぐ下で立ち尽くす私に、怪訝そうな顔を浮かべて、あなたが少し大きいその傘をさしかけた。
「風邪引くよ」
きっと泣き腫らして真っ赤に充血した私の目にも気づいたはずなのに、何も聞かないでくれるその優しさに甘える。
「ありがとう」
涙と雨粒でびっちょり濡れてしまった私のハンカチを一瞥したあなたが、自分のハンカチで滴り落ちる雫を拭ってくれた。
雨の音に遮られて、あなたの息づかいだけが私の世界の全てになる。
通り雨だったらしい雷雨が過ぎて、雲の切れ目から青空が顔を覗かせる頃には、私の涙もその通り道を示すだけになっていた。
傘を畳んだあなたとじっとりとした雨の匂いが漂う道を歩く。

雨の香り、涙の跡

途中書きです!

6/18/2025, 10:14:45 AM

小指に繋がれた鮮烈な赤い糸が、おぞましいほどの鈍い赤に染められる。
糸の先で瞳を見開くその人は言葉を形に出来ないまま命の終わりを迎えた。
途端に重みを増した糸に顔をしかめて結びに手を掛ける。
あっけないほど簡単にほどけたそれは音もないまま落ちて溜まった血の上に模様を描いた。
少し跡が残った小指をさする。
どうやらこれは運命じゃなかったみたいだった。

6/17/2025, 11:03:49 AM

どうやったって届かないのに、あなたに届けたい言葉だけは尽きることを知らなかった。

届かないのに

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