「え」
小さく驚いたような声が聞こえた。
その声に振り向いてみれば傘を持って少し目を見開いて立っているあなたと目が合う。
大きな雨粒が降り注ぐ下で立ち尽くす私に、怪訝そうな顔を浮かべて、あなたが少し大きいその傘をさしかけた。
「風邪引くよ」
きっと泣き腫らして真っ赤に充血した私の目にも気づいたはずなのに、何も聞かないでくれるその優しさに甘える。
「ありがとう」
涙と雨粒でびっちょり濡れてしまった私のハンカチを一瞥したあなたが、自分のハンカチで滴り落ちる雫を拭ってくれた。
雨の音に遮られて、あなたの息づかいだけが私の世界の全てになる。
通り雨だったらしい雷雨が過ぎて、雲の切れ目から青空が顔を覗かせる頃には、私の涙もその通り道を示すだけになっていた。
傘を畳んだあなたとじっとりとした雨の匂いが漂う道を歩く。
雨の香り、涙の跡
途中書きです!
6/19/2025, 10:13:47 AM