『イブの夜』
雪の花が視界に舞って、クリスマスイブの夜を白く染め上げる。
吐く息すらも柔らかに凍って、それでも隣で笑う君のおかげで体温は燃えそうなほどに熱い。
今にも触れ合いそうな手だって、君との体温を共有していた。
「綺麗だね」
「そうだね」
眩いほどのイルミネーションと紅く染まった君の頬だけが、やけに瞳を占領する。
不意に交わった視線が鼓動を高鳴らせた。
その胸のときめきのまま君の名を呼ぶ。
君の唇がどうしたの、なんて形作った。
「好きだよ」
君の瞳が大きく開かれる。
唇が戦慄いて、君の動揺を如実に伝えた。
触れれば切れてしまいそうなほどの緊張に包まれた空気が、君の言葉で揺れる。
「私も好きです」
心に火が灯ったような気がした。
君の瞳が僕を射貫く。
二人の手が触れるまで、その目をそらすことはなかった。
『プレゼント』
婚約指輪をクリスマスプレゼントにするなんてありふれているかもしれないけれど、あなたの幸せと、笑顔と、それに付随する私の幸せを願って、その瞳を見つめた。
プレゼントといえばなんですけど、クラスの男子から好きな子へのクリスマスプレゼントを相談されて一緒に考えてたら自分がウニの研究をしてるのが虚しくなってました。いいんですよ、推しカプが幸せであれば。
来年があるよって自分のこと励ましてます。
『ゆずの香り』
ちゃぷ、と水面が揺れた。
淡いゆずの香りが鼻腔をくすぐる。
無意識に息が漏れた。
「きもち……」
暖かなお湯と好きな香りに囲まれて、瞼が徐々に下がるのを感じる。
眠らないほどのぎりぎりのライン感で心を休めて、日々の疲れが消えていくのを感じていた。
『大空』
雲に覆われた大空から、はらりと雪が舞い落ちた。
柔く手に乗ったそれは静かに溶けて、小さな水溜まりだけを残す。
隣の君が、わぁ、なんて小さく歓声をあげた。
「ホワイトクリスマスだ」
瞬く間に勢いを増した雪が一面を白に染め上げた。
イルミネーションの光がやけに輝いて見える。
「そうだね。綺麗」
君と見れてよかった、なんて言葉はまだ言えないままだ。
「でもちょっと寒いね」
言葉とは裏腹に嬉しさを満面に湛えた君が柔らかく笑った。
「じゃあ、手、繋ごうよ」
精一杯の勇気を振り絞って君を手を差し出す。
みるみるうちに頬を紅く染めた君が、うん、なんて頷いて、僕の手に君の手を重ねた。
バックナンバーさんのヒロインを意識して書きました。
転びそうになるシーンがどうしても書けなくてこうなっております。
昨日で♡1000到達しました!
ありがとうございます!!
これからも楽しんで書くのでよろしくお願いします!
『ベルの音』
ベルの音が鼓膜を震わせて、クリスマスが近づいていることを知らせる。
目についたクリスマスツリーはイルミネーションに覆われ、眩いほどに輝いていた。
ふと、あなたの顔が脳裏に浮かぶ。
「誘おっかな…」
クリスマスに一緒に過ごしたい相手なんていなかったはずなのに、あなたがいいと思ってしまうなんて。
驚くほどあなたに惹かれていることにはまだ気づかないふりをして、あなたを誘う言葉を考えた。