『柔らかい雨』
あなたがそばにいてくれるだけで、一人じゃ耐えられなかった冷たい雨でさえ、光のような柔らかい雨に姿を変えた。
あなたの涙を覆い隠すような、そんな柔らかい雨になりたいと願った。
『一筋の光』
BL要素あります。お気をつけください。
何も見えない底無し沼のような俺の世界で、やけに眩しい顔であなたが笑って、手を差し伸べるから、その手にすがり付きたくなった。
掴んでいたはずのものさえなくなってしまったのに、生きる意味なんてなくなったのに、無意味にも生に執着する俺を、その愚かさや醜ささえあなたが受け止めてくれたから。
この身も心も、あなたに捧げると決めたんだ。
あなたが美しいと思える世界であることを、ただひたすらに希っていた。
あなたが美しいと思う世界を、誰よりも大切なあなたの隣で見たいと思った。
――ねぇ、鯉登さん。俺の生きる意味なんて、あなたが笑ってくれるだけで満たされるんですよ。
そんなこと知らなくてもいいから、ずっと幸せでいてください。
俺を、あなたの隣で幸せにしてください。
俺にとって、一筋の光のようなあなたを見失わないように、その手を力の限り握りしめた。
自分が濡れることさえ厭わずに濡れている人に傘を差し出して、できるだけ多くの人に優しさを分け与えようとするような、誰の一筋の光にもなりえるような男だったから、そんなお前に傘を差し出すのは私であってほしいと思った。
今日は鯉月両方の目線から書いてみました(鯉登さん短いですすみません)。
鯉登さんは太陽みたいな光、月島さんは月みたいな光だと思ってます。
『哀愁を誘う』
あなたには哀愁を誘うような、そんな悲しそうな顔をしてほしくなくて、無防備に晒された白い頬に手を伸ばした。
『鏡の中の自分』
あなたと一緒にいられるときの鏡の中の自分が、いっとう嬉しそうな顔をして見えた。
あなたに可愛く見られるために鏡の中の自分とにらめっこをしていた私は、今はそんなことをしなくても、あなたにありのままを見せれるようになりました。
鏡の中の自分がやけに浮かない顔をして見えたから、たまには学校をサボってみることにした。
たまにはそんなことがあってもいいんじゃない?
自分のことは自分で労ってあげたいの。
『眠りにつく前に』
BL要素あります。お気をつけください。
生まれたときから、この人生のものではない、遠い昔の記憶を持っていた。
俺が永遠の眠りにつく前に、誰か知らない人が大粒の涙を溢しながら柔らかく微笑んでいる記憶。
ずっと記憶の海に揺蕩っていたその人が、まさか、目の前に現れるとは思わなかった。
人混みの中、俺と同じように目を見開きながら立ち尽くすその人は、俺と同じ記憶を持っていることを如実に感じさせた。
「つきしま…?」
薄く開いた唇から、俺の名が溢れ落ちる。
「鯉登さん…」
この人生では触れたことも呼んだこともない名が自然に出てきた。
あぁ、そうか。この人は鯉登さんっていうんだ。
「会いたかった…!」
次の瞬間にはその長い腕の中に囲いこまれていた。
嫌悪感なんて全くなくて、むしろずっとそうしてほしいと願っていたような気さえしてくる。
広い背中に手を回した。
「俺も、会いたかったです」
今世でも。
続けようとしたその言葉はあなたの声に被さった。
「今世でも、隣にいてくれるか」
「もちろんです」
これが運命であろうと、必然であろうと、偶然であろうと、なんでも構わなかった。
ただ、あなたさえいてくれるのなら。
また、俺が眠りにつく前に見る顔が、あなたであるのなら。
あなたが眠りにつく前の顔を、見ることができるのなら。
この貪欲な俺を愛してくれるのが、あなたであれば。
また鯉月ですね。現パロです。
私鯉登さん目線書けないかもしれない。なんでなんや。
どの時代でもお互いの未来がお互いの瞳に映る延長線上にあってほしいです。