『眠りにつく前に』
BL要素あります。お気をつけください。
生まれたときから、この人生のものではない、遠い昔の記憶を持っていた。
俺が永遠の眠りにつく前に、誰か知らない人が大粒の涙を溢しながら柔らかく微笑んでいる記憶。
ずっと記憶の海に揺蕩っていたその人が、まさか、目の前に現れるとは思わなかった。
人混みの中、俺と同じように目を見開きながら立ち尽くすその人は、俺と同じ記憶を持っていることを如実に感じさせた。
「つきしま…?」
薄く開いた唇から、俺の名が溢れ落ちる。
「鯉登さん…」
この人生では触れたことも呼んだこともない名が自然に出てきた。
あぁ、そうか。この人は鯉登さんっていうんだ。
「会いたかった…!」
次の瞬間にはその長い腕の中に囲いこまれていた。
嫌悪感なんて全くなくて、むしろずっとそうしてほしいと願っていたような気さえしてくる。
広い背中に手を回した。
「俺も、会いたかったです」
今世でも。
続けようとしたその言葉はあなたの声に被さった。
「今世でも、隣にいてくれるか」
「もちろんです」
これが運命であろうと、必然であろうと、偶然であろうと、なんでも構わなかった。
ただ、あなたさえいてくれるのなら。
また、俺が眠りにつく前に見る顔が、あなたであるのなら。
あなたが眠りにつく前の顔を、見ることができるのなら。
この貪欲な俺を愛してくれるのが、あなたであれば。
また鯉月ですね。現パロです。
私鯉登さん目線書けないかもしれない。なんでなんや。
どの時代でもお互いの未来がお互いの瞳に映る延長線上にあってほしいです。
11/2/2024, 10:38:18 AM