『鏡の中の自分』
あなたと一緒にいられるときの鏡の中の自分が、いっとう嬉しそうな顔をして見えた。
あなたに可愛く見られるために鏡の中の自分とにらめっこをしていた私は、今はそんなことをしなくても、あなたにありのままを見せれるようになりました。
鏡の中の自分がやけに浮かない顔をして見えたから、たまには学校をサボってみることにした。
たまにはそんなことがあってもいいんじゃない?
自分のことは自分で労ってあげたいの。
『眠りにつく前に』
BL要素あります。お気をつけください。
生まれたときから、この人生のものではない、遠い昔の記憶を持っていた。
俺が永遠の眠りにつく前に、誰か知らない人が大粒の涙を溢しながら柔らかく微笑んでいる記憶。
ずっと記憶の海に揺蕩っていたその人が、まさか、目の前に現れるとは思わなかった。
人混みの中、俺と同じように目を見開きながら立ち尽くすその人は、俺と同じ記憶を持っていることを如実に感じさせた。
「つきしま…?」
薄く開いた唇から、俺の名が溢れ落ちる。
「鯉登さん…」
この人生では触れたことも呼んだこともない名が自然に出てきた。
あぁ、そうか。この人は鯉登さんっていうんだ。
「会いたかった…!」
次の瞬間にはその長い腕の中に囲いこまれていた。
嫌悪感なんて全くなくて、むしろずっとそうしてほしいと願っていたような気さえしてくる。
広い背中に手を回した。
「俺も、会いたかったです」
今世でも。
続けようとしたその言葉はあなたの声に被さった。
「今世でも、隣にいてくれるか」
「もちろんです」
これが運命であろうと、必然であろうと、偶然であろうと、なんでも構わなかった。
ただ、あなたさえいてくれるのなら。
また、俺が眠りにつく前に見る顔が、あなたであるのなら。
あなたが眠りにつく前の顔を、見ることができるのなら。
この貪欲な俺を愛してくれるのが、あなたであれば。
また鯉月ですね。現パロです。
私鯉登さん目線書けないかもしれない。なんでなんや。
どの時代でもお互いの未来がお互いの瞳に映る延長線上にあってほしいです。
『永遠に』
BL要素あります。お気をつけください。
陳腐な言葉を嫌うあなたが「永遠に愛するから、隣にいてくれないか」なんて頬を赤く染めて言うものだから、思わず笑ってしまった。
空気の揺れに気づいたあなたが頬を染めたまま唇を尖らせる。
「なんで笑うんだ」
「なんででしょうね、やけに可愛らしくて」
それだけだった。
少し震えている手も、どれほど歪めても美しい顔も、月光のような柔らかい優しさだって、全部が可愛らしくて、愛おしかった。
ぐ、と言葉をつまらせるあなたの頬に手を伸ばす。
そこに稲妻のように走る傷だって、あなたを作っていると考えたら愛おしくてしょうがない。
「あなたはそういう言葉好きじゃないと思ってました」
「たしかに好きではないが、しょうがない。お前と永遠に隣にいられるのはこの言葉しかないと思った」
今度はこちらが照れる番だった。
だって、そんな真っ直ぐな言葉。効かないわけがない。
「どんな言葉だって、あなたがくれたのなら宝物ですし、なによりもとから俺はあなたの隣で一生を過ごすつもりでしたよ」
空気が、甘やかに揺れた気がした。
あ、と思ったのも束の間、乾燥した唇にあなたのそれが重なる。
ふ、と吐かれた息が静かに唇をくすぐった。
「永遠に続けばいいのに」
「続かせるんですよ」
あなたの瞳に映る俺は、きっと俺の瞳に映るあなたみたいな顔をしているんだろう。
それだけのことがやけに恥ずかしくて、誇らしくて。誤魔化すようにその手を握って、あなたの名前を呼ぶ。
永遠に続くこの世界は、きっとあなたの隣なら美しく輝くんでしょう。
久しぶり(?)に鯉月書いてみました。
これまた珍しく明治軸ですね。
鯉登さん目線書きたいって言ってたのはどこの誰でしょう。ほんとに。
お互いにお互いが宝物で、生きる意味で、世界の美しさであってほしいです。
『理想郷』
嫌いな人もいない。
勉強もしなくていい。
余計な気も遣わなくていい。
泣いてたって、誰にも怒られない。
そんな理想郷まで、あと一歩。
ビルの屋上から、空を舞うために足を踏み出した。
『懐かしく思うこと』
あなたとの日々が、私の懐かしく思うことにならないように、いつでも今をあなたと生きられるように、その手を握った。