『友達』
失恋したあなたが私の隣で静かに涙を流す。
ひく、ひくという声と、私が背中を撫でる音だけがやけに響いた。
少し落ち着いたあなたが、まだ濡れた声色でありがとう、と笑った。
「やっぱり、一番の親友だよ」
なんて笑うあなたは、私の気持ちには気づいていないのだろう。
まだ、それでいいのだ。
あなたが完全に立ち直って、新しい恋を見つめられるようになるその時まで、私はあなたの友達でいるから。
だから、どうか、私が気持ちを打ち明けたときには真剣に向き合ってほしい。
『行かないで』
行かないで、なんてすがりつくことができたのなら、今も私の隣はあなただったのだろうか。
あの時にあなたが言ったのは行かないで、なんて可愛らしいものじゃなくて、行くな、というなんとも上からの言葉だったけど、その震える手と縋りつくような瞳は確かに行かないで、という色を宿していた。
振り払おうと思えばいくらでもそうすることができたのにしなかった理由を、あの時の俺は知らなかったけど、今ならきっとわかる。
俺だって、きっと、あなたのことが好きだったんだ。
結果的に俺はあなたを選んで、あの人を捨てたことになったが、その選択を後悔したことはない。
後悔する暇などないほどに、あなたに愛された自覚があった。あなたを愛した自覚があった。
人生の全てを捧げられるほどに、俺の今までをたった一言でひっくり返してしまったあなたが、大切で、愛おしくて、何よりも美しかったんだ。
『どこまでも続く青い空』
血と肉に埋もれていた俺が、どこまでも続く青い空を見れるようになったのは他でもないあなたのおかげだったから、そんなあなたには、ただひたすらに幸せな未来が来ることを願っている。
どこまでも続く青い空だって、どこまでも輝く綺麗な星だって、どこまでも繋がる人の絆だって、全部あなたがいなかったら知ることすら出来なかっただろう。感謝と信頼と情愛と、何もかもをひっくるめて穏やかに眠るその顔を見つめた。
ゴールデンカムイ、杉リパにもはまっただって!?公式ですしね、しょうがないです。
前作で♡500達成しました。ありがとうございます。これからものんびり好きなように書いていきます。
『衣替え』
衣替えをして少し早めに出したパーカーのポケットに、あなたが寒いだろ、と私の手を握って一緒に突っ込む。
仄かに赤く染まったあなたの耳と、じんわり伝わるあなたの体温だけで私の体温は急上昇だけど、ありがとう、なんて呟いてみせた。
『声が枯れるまで』
声が枯れるまであなたの名を呼ぶから、どうかあなたも答えてはくれないだろうか。
声が枯れるまでお前の名を呼ぶ。
ただひたすらに、返事が欲しかった。
お前の笑顔が見たかった。
そんな言葉で、気持ちを封じ込めないで欲しかった。
お前にも、声が枯れるまでその感情をぶちまけて欲しかった。
そうすることのできる相手が、私であればいいと思っていた。