『不完全な僕』
不完全な僕だけど、君が愛してくれるのなら。
足りない部分だって補えそうな気がするんだ。
『香水』
人混みの中でふと香ってきた香水の匂いに足を止める。
やけに気品を纏ったその匂いで思い出すのは、とうの昔にいなくなったあなたのことだけで。
忘れられたと思っていたのにな、なんて自嘲的な笑みが溢れた。
つきり、つきりと胸を刺す痛みには気づかないふりをして、前へと歩を進める。
だけど、痛みは存在感を増すばかりで。
やっぱりね、俺にはあなたがいないとだめなんだよ。
『言葉はいらない、ただ・・・』
言葉はいらない、ただ・・・。
あなたとの思い出をください。
いつかあなたの隣にいられなくなっても、それだけで生きていけるような。そんな記憶を私にください。
『突然の君の訪問』
突然の君の訪問に、嬉しさとか喜びとかそんなものよりも先に驚きがやってきた。びっくりしすぎて一瞬固まる僕に君はくす、と笑いながら定期を差し出す。
「これ、忘れてたよ。明日じゃ遅いかなって、届けに来た」
「あ、ありがと」
少し震える手で定期を受けとる。
君はまた鈴みたいな笑い声を上げて全然、と答えた。
じゃあね、また明日、なんて言いながらローファーの音を響かせて去っていく君を呼び止める言葉を、僕は知らない。
ただただ小さくなっていく後ろ姿を見つめている。
明日は自分から君に話しかけよう、と決意を固めて家に入ったのは実に10分後のことだった。
主人公の純情ボーイが定期を忘れたのは偶然とかじゃなくて明日受け取って君と話す口実になればな、なんて考えてのことでした。
本文中にうまく入れられなくて申し訳ないです🙏
『雨に佇む』
あなたの隣が私である必要なんてないから。
どうか。
あなたが一人で雨に打たれることがありませんように。
いつかの私みたいに、雨の中で佇むしかないなんてことが、ありませんように。