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『香水』

人混みの中でふと香ってきた香水の匂いに足を止める。
やけに気品を纏ったその匂いで思い出すのは、とうの昔にいなくなったあなたのことだけで。
忘れられたと思っていたのにな、なんて自嘲的な笑みが溢れた。
つきり、つきりと胸を刺す痛みには気づかないふりをして、前へと歩を進める。
だけど、痛みは存在感を増すばかりで。
やっぱりね、俺にはあなたがいないとだめなんだよ。

8/30/2024, 11:44:09 AM