心の健康が必要なら、今すぐ親を消すしかない。
君の奏でる音楽が好きだ。
そりゃ、世間からすると取るに足らないものだけど。
君の指はいつだって必死に楽譜をなぞって、
感情も気持ちも入っていない。
けど、そのぎこちない音は、私に届いた。
だから今日も君の音を聞く。
いつの日か君がステージに立つのなら、
最前席でアンコールを贈ろう。
あたし、太陽って嫌いなんだ。
日焼けするし、暑いし、眩しいし。
だから、よくあるあの
「君は僕の太陽だ〜」
みたいな言葉が大っ嫌いでさ。
月のようだ、も腹が立つ。
他の光が無いと輝けない月みたいって、
どんな言葉よりも嫌味ったらしい。
だから君のその、
飾り気の無い言葉に惚れたんだよ。
太陽とか月を通さないで、直に私を見てくれる君。
多分、人生でずっと好きかも!
ここは病室。それも、精神科棟らしい。
少なくとも、自分はおかしくないのだが。
自称医師からすると、自分はパーソナリティ障害、
その中でも妄想型らしい。認めないが。
そもそも、ここに来るまでの記憶が朧気なのだ。
自分が真面目で優等生で人気だったこと、
前の場所で命を絶とうとしたことは覚えているが、
その理由がどうしても思い出せない。
自称医者__イナ先生は何か知っているっぽいが。
考えてても仕方がない。
せっかくだから、愉快な仲間たちを紹介しよう。
隣の部屋で毎晩叫んでいるのはパニック障害の男性。
よくわからないが、夜になると窒息しそうになって、
息をするため、助けを呼ぶために声を出すらしい。
朝と昼は気の良い男だから、
少しの騒音はまあ我慢しよう。
毎晩、就寝時間後に徘徊するのは、夢遊病の女性。
あの部屋の扉は何個も南京錠が付いているが、
何故か彼女は全て開けて部屋から出ていく。
今週もまた鍵が増えるのだろうか。
うざいのは、自己愛性パーソナリティ障害のあいつ。
くくりが同じ病名なのが腹が立つが、
更にこいつの自慢話が耳障りでしょうがない。
この病棟に入るなら、絶対関わるなよ。
奴と行動するのは、パーソナリティ障害依存性の女。
迂闊に関わるのはやめとけ。
イナ先生が手を焼くぐらいだ。
関わったら最後、
地獄まで追いかけてくる勢いだぞあいつ。
あ〜後は影が薄すぎたり、
軟禁中だからわかんないが…
そうだそうだ、イナ先生を紹介しよう。
この病棟で自分と同じまともな人間で、
自分たちの治療をしているらしい。
らしい、というのも、
検診だと世間話くらいで何もしないからだ。
たまにバツの悪そうな顔をしているのが気になるが。
うん。
本当はみんなちょっとわかってるんだぜ。
この施設の、本当の役割。
軟禁中になったあいつらは絶対帰ってこない。
だから、自分達ができるのは、
「私達はまともですよ。」
とカウンセリングで話すくらい。
今日も、4人で生き残ろうね。
未来が明るいなんて誰が言ったんだよ。
報われない努力は努力じゃない。
だから自分は努力してない。
なのになんだ。
よく頑張ったね。
次頑張ろう。
次なんてあるわけないだろ。何が頑張っただ。
どうせお前は俺より点数いいんだろ。
親に褒められて、先生にも1目置かれてる。
何?哀れみ?普通にいらないから。
自他ともに認める捻くれ者だからいらいらしちゃう。
はいはい、すみませんでした。
次頑張ります。
いっぱい努力します。
いつかあなた達に認めて貰えるように、
頑張ってきたのにな。
死ぬ勇気なんてない。生きる元気もないけど。
明日の学校行きたくないな。
テストもあなたも見たくない。
あなたの顔が、匂いが、雰囲気が、
私の孤独を際立たせる。
あなたがいない人生は
きっと白黒だけど、
それでも満たされていたんだろう。
ないものねだりは結構むなしい。
だから私はひとりでいたい。
ひとりでいいよ、ずっとずっと。