「もう少しだ…もう少しで助かる!しっかりしろ!」
背中に担いだ友に、そう言った。
返事は帰ってこない。
ここは、砂漠。
四方八方が砂ばかり。気がついたらここにいた。
大方、寝坊したから作戦に置いていかれたんだろうが、しばらく飲まず食わずだったせいか、自分も友も疲弊していた。
「大丈夫だ……もう少し、もう少しだ……」
その言葉は、友に向けたものか。それとも、自分に言っているのか?
長い長い足跡を付けながら、
旅は続く。
永遠なんて、ないけれど…
永遠なんて、欲しくは無いけれど……
それでも、貴方への愛は、きっと永遠の物なのです
あの時、君を引き止めていれば。
あの時、君に何か言えていたら。
言い出せなかった「 」
思えば君とは長い付き合いで、僕が色々な事情でこの地域の人達に引き取られた時から、ずっと傍に居た気がする。歳も近かったし、家もお隣同士で、お互い外で遊ぶのが好きで、隠れん坊よりは鬼ごっこ派で、袋菓子をひとつ買うよりも沢山の小さいお菓子を買う方が好きだった。
中学校に入ってからは、顔を合わせるのも気恥ずかしくて、なぜだか会う機会も減っていったが、それでも帰り道、君は校門でいつも僕を待っていた。僕に笑いかける君のその顔が夕焼けの空に照らされて、なぜかは分からないけれど、少し切なかった。
──────多分、初恋だったのだと思う。
僕らが住んでいた地域は大変田舎だったもので、小学校と中学校は合体していたし、高校もひとつしか無かった。将来何かやりたいことがある同級生は、この街から巣立ち、どこか遠くの学校へと旅立って行ったが、僕は将来やりたいこともなくて、なんだかんだでこの街の高校に進学した。君もそうだった。
この頃になると、君と僕は毎朝家の前で待ち合わせをして、スクールバスでは隣にたち、下校の時はどちらかが言い出さなくても、校門の前で片方を待っていた。
今日は僕の方が早く校門に着いた。
─なあ、お前。あの子と付き合ってるのか?
─はぁ!?告白してない!?
─あの子結構モテてるし取られちゃうかもな。
同級生のからかい声が頭の中に響く。
…告白。
夕暮れに照らされたようなオレンジ色ではなく、タコの様に真っ赤になっていたと、君は笑った。
……告白、していたら。
何かが変わったのだろうか。
今は君の最後の言葉だけが耳に残る。
「さようなら」
心の中の風景は、今もあの荒野を写している。
あの日、失った宝物。
あの日、得た新しい居場所。
どれだけ時間が経って、今いる場所が変わっても、
きっとあの荒野はずっと着いて回るのだろう。
──大いなる神との戦いが終わって3年。
戦の跡を鮮明に残していたこの城下町も、今では元通り…とまではいかなくても、以前の活気を取り戻している。
隣に座ってパンを頬張る家族。
壊れたベンチを直す大工の親子。
元気いっぱいの子供たちと遊ぶ兵士たち。
皆が皆、笑顔を浮かべている。
……賑やかだ、本当に。
だけど、君はこの光景に映らない。
アング。僕の大切な仲間。
大切な友人。大切な…恋人。
彼女は大いなる神との戦いの最中、僕を庇って倒れた。 致命傷だった。
アングは、死ぬ最中、何を考えていたのだろう。
何を感じていたのだろう。
僕には何も分からない。
だけど、
君が見た景色を、僕も見てみたい。