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ここは病室。それも、精神科棟らしい。
少なくとも、自分はおかしくないのだが。
自称医師からすると、自分はパーソナリティ障害、
その中でも妄想型らしい。認めないが。
そもそも、ここに来るまでの記憶が朧気なのだ。
自分が真面目で優等生で人気だったこと、
前の場所で命を絶とうとしたことは覚えているが、
その理由がどうしても思い出せない。
自称医者__イナ先生は何か知っているっぽいが。
考えてても仕方がない。
せっかくだから、愉快な仲間たちを紹介しよう。

隣の部屋で毎晩叫んでいるのはパニック障害の男性。
よくわからないが、夜になると窒息しそうになって、
息をするため、助けを呼ぶために声を出すらしい。
朝と昼は気の良い男だから、
少しの騒音はまあ我慢しよう。

毎晩、就寝時間後に徘徊するのは、夢遊病の女性。
あの部屋の扉は何個も南京錠が付いているが、
何故か彼女は全て開けて部屋から出ていく。
今週もまた鍵が増えるのだろうか。

うざいのは、自己愛性パーソナリティ障害のあいつ。
くくりが同じ病名なのが腹が立つが、
更にこいつの自慢話が耳障りでしょうがない。
この病棟に入るなら、絶対関わるなよ。

奴と行動するのは、パーソナリティ障害依存性の女。
迂闊に関わるのはやめとけ。
イナ先生が手を焼くぐらいだ。
関わったら最後、
地獄まで追いかけてくる勢いだぞあいつ。

あ〜後は影が薄すぎたり、
軟禁中だからわかんないが…

そうだそうだ、イナ先生を紹介しよう。
この病棟で自分と同じまともな人間で、
自分たちの治療をしているらしい。
らしい、というのも、
検診だと世間話くらいで何もしないからだ。
たまにバツの悪そうな顔をしているのが気になるが。







うん。








本当はみんなちょっとわかってるんだぜ。
この施設の、本当の役割。
軟禁中になったあいつらは絶対帰ってこない。
だから、自分達ができるのは、
「私達はまともですよ。」
とカウンセリングで話すくらい。
今日も、4人で生き残ろうね。

8/2/2023, 10:52:04 AM