summer

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4/18/2023, 7:32:49 AM

/桜散る


今年もいってしまったね
春はいきものみたいに
土地を飲みこんで去ってく

たとえば春は
まっしろい鯉のぼりの姿をしていて

南から現れ
この島々をのみこんで
お腹の中にうずまく花吹雪の風で
さんざんお祝い騒ぎをやらせたら
するり北へと抜けていく

ほんものの鯉のぼりの先に立って
温かい季節を告げ泳ぐ
大きな大きな
見えない
風の魚が──

4/14/2023, 12:58:12 AM

/快晴



新しいリップを一本買った。
するどくカットされた瑪瑙(めのう)のよう、
なめらかに真新しいリップの先。

ふらりと寄ったはじめての店で
千円もしないリップを買った。
新色だってさ、季節の。

黒いボディのばかり使ってたけど
白いのを買った。
はじめて──
それだけで空が
さっきよりかがやいて、青い。

4/12/2023, 10:28:47 PM

/遠くの空へ


歩いてきた道をふり返ると
足跡が文字のようにもつれて
これまでの道がうねうねと続く
    ひとつの文章として見える

ここまで来たんだ、と思う
成し遂げたこともない
友だちも失ってきたけれど
遠くへ行きたいという願いだけは
皮肉のように叶った

ふり返る彼方がとおく
かつて遠くに見た空の下にいま居る
それだけで ひとつ
ひとつだけ、
認めきれない自分の通信簿に
『済』の判を押す

これよりも遠くへ
行けるか まだ
まだ歩く
生きているなら行かねばならないし
もうすこし
良い一文(あしあと)が綴れるかもしれない

4/5/2023, 2:27:54 PM

/星空の下で



君にはじめて会ったのは
二十年前のおとついの星の夜

星あかりなんて
街の灯に消されるね、と
くやしそうに笑って砂浜に裸足
まだつめたい海の水を蹴った

流れ星のような女(ひと)だった
願いをつぶやきながら
君の軌跡をみおくって
ぼくはまだ地上にひとり

君にまた会えるとしたら
おとついの先の二十年の夜の星

世間なんかお構いなしの
宇宙人みたいなきみ
流星のしっぽは消えない尾を引いて
ぼくにいつまでも刻まれてる

4/5/2023, 9:19:52 AM

/それでいい



決められなかったから
ぜんぶおまかせ

(いっしょでいいよ)

らくちんだった
責任もないし
だけど今
あれ、良くなかったんだなあ

(それでいいよ)

が積み重なって
決められなくなってしまったんだなって
決める力を持てなくなってしまったんだって
気づいたから

少しでも取り戻したくて
せめてね
もう言わない

(それでいいよ)

って、もう言わない。

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