「とりとめもない話(創作)」
食器がカチャンと重なる音。ドアが開きお客さんが入ってくる音。どこの国だか分からない、民族風の音楽。そして会話。
「旦那がさぁ、今度、転勤らしくて」
「単身?! 家族で行く?」
「まだ決まってないの… 」
わたしの目の前に座っている2人の友人が話出した。そこに私の隣の友人が加わる。
「出張とか転勤とか、味わってみたーい」
「何言ってるの。ほんとに大変なんだから」
と、私も話に加わると、自然に違う会話へと移り変わる。
「昨日、私の推しの歌番組見てくれた?めっちゃ、かっこよかったァ」
「見て!と言われたから見たよ。いいなぁ、推しのいる生活!」
「作りなよー!毎日楽しいよ」
「ところでさ、このコーヒーすごく美味しい」
話を止めて、みんなで頷く。次はわたしが話す番!と決めなくても、改めて見ると、私達の口からは、泉のように話題が溢れ出る。それがなんだか面白くて、くすっと笑ってしまった。
「え?!何、、笑ってんのー気持ち悪いー。あ、気持ち悪いといえばさ! 」
とりとめもない話は、あと3時間続くだろう。
「雪を待つ(創作)」
朝から寒いなぁって思っていたら、パパもママも肩をすぼめて「寒い 」って言ってた。
ぱあーっとカーテンを開けたら、ふわふわしたものが上から降っていて、庭も真っ白になってて、前が見えないくらいだった。
こ、これはなんなんだ?!
僕が一瞬固まったのを見て、パパとママがくすくすと笑った。
そんなことはお構い無し!ママが窓を開けた瞬間僕は、外に飛び出した。
冷たい白いものに包まれて、なんだか楽しくなって大はしゃぎしちゃった。
全身ベタベタになったけど、はしゃいでいたから全然寒くなかったよ。
あの時は楽しかったなぁ。
また降らないかなぁ、白いふわふわして、冷たいの。
今いる部屋は、あたたかくて、ウトウト眠くなっちゃうけど·····ふぁーーー
「あ、雪!」
ママが、嬉しそうな声で言った。
え?!雪?!
僕は、喜びのあまり、ちぎれるほどしっぽを振った。
「心と心(創作)」
隣の人は何をやっている人なのか、分からない。朝は7時、夜は8時くらいに帰ってくるからOLさんなのだろうか。時間だけで人の職種までは分からないか。
小さなベランダに置いてある、植木に水を含ませた。空を見上げると眩しいくらいの光が私を照らした。
散歩でもしようと思わせてくれた太陽さんには申し訳ないほど、誰にも会わないし、声もかからない…同じマンションの人とすれ違っても無闇には声を掛け合わない。
ネットを見ると、意気揚々とした言葉や、威勢の良い言葉が並んで、その下にそれをまた攻める言葉…そして遠くからは、そのことを言っているんであろう謎の独り言…
この人たちはどんな仕事をして、どんな生活して、どんな気持ちで言葉を紡いでみいるのだろう。ちょっと、悲しい気持ちになって、パソコンを閉じた。
「もしもし、お母さん?」
「どうした?何かあった?」
「やっぱり、会って話す。特に何があった訳じゃないよ。話したいだけ。来週末帰るから、肉じゃがよろしく!」
「わかったよ。待ってるね」
人との繋がりって時には面倒なことが多いけど、だけどやっぱり、ひとりの世界は孤独すぎる。
めんどくさいけど、繋がりは求めてる、わがままな自分がいた。
「何でもないフリ」
会社の先輩を好きになって1年が過ぎた。先輩は困っている人がいると、雰囲気で察知して直ぐに声をかけてくれる、まあ、誰にでも優しいのだけど…その優しさに私は、やられてしまった。
コンコンと、デスクを同僚がノックをするように叩いた。
「今日、仕事終わったら飲みに行かない?」
「いいよ。店は任せるね」
久々に飲んで帰れると思ったら、あっという間に時間が過ぎたように感じた。仕事が終わり、会社の外でみんなを待っていると先輩が1人で降りてきた。
「え? 先輩も今日飲みに行くんですか?」
「あれ?聞いてなかった? 俺、今度転勤決まったんだよ。そしたらみんながお別れ会してくれるって言うから」
転勤?!え?!
ドタドタと音を立てて駆け寄ってきた同僚の目が泳いでいるように見えた。
「先輩、もしかして今日の飲み会の目的、言っちゃいました?」
「あ、うん。いまさきっき」
「そうなんですねぇ。すみません、この子にまだ言ってなくて、びっくりしちゃったかも」
そう言いながら、私の背中を見えないようにゆっくりとさすってくれた。
私に気を使って言わないでくれたのか…言わなくても直ぐに分かることなのに…。
同僚に小声で【大大丈?】と聞かれたから、私は口角を上げて「大丈夫」と答えた。
「仲間(創作)」
女子高生達が、白い息を出しながら、笑い転げて私の横を通り過ぎた。
いろんな悩みを抱えながらも、時間は無限にあるように思えて夢を見ていたあの頃…ふと昔のことが頭に浮かんだ。
体育祭の合間にクラス対抗の応援合戦があり、そのクラス隊長に選ばれてしまった。どちらかと言えば責任感が強く、皆んなには苦労をかけたくないと言う思いから、残りのラストスパートという所で、1人で抱え込んでしまっていた。
衣装作り…看板作り…もうお手上げって時に、クラスの子達から怒られたことがあった。
「これはあなただけの応援合戦ですか?」
「なんで私たちに言ってくれないの?」
「ひとりでなんかできないでしょ? 」
今思えば怒られたんじゃなくて、伝えてくれたんだよね。素直に、ありがとうとか言えなくて、、ほんの少し変な空気になっちゃったけど、そう言ってくれなかったら、応援どころではなかったはず。
それぞれが自分の得意分野に別れて、みんなで居残りで作業した事も今では良い思い出になっている。
みんな、元気にしてるかな。
会った瞬間に、高校生の私たちにもどって楽しい時間を過ごせるはず。
会いたいな。
ふふっと笑った私の口から、白い息がこぼれた。