普段
「こうだったらいいのに」みたいな
想像はしないようにしていますが
どうにも羨ましくなったのでやらせてほしいと思います。
もしも、私が
白い毛皮をフワフワさせて
長い耳をそっと垂らした
ケージの中のウサギさんなら
きっと、
貴方は毎日顔を見せては
その手で食べものをご馳走してくれます
きっと、
貴方は私の自慢の体毛に触れては
柔らかい肉や細い背骨を優しく撫でてくれます
きっと、きっと、きっと、きっと、きっと、
寂しいからって触れさせてくれます
今日だけは理想論を吐いたので
少し胃のキリキリがすっきりしました
だって、まだあなたが好きなんですもん
『厳しい暑さが残るなか、
いかがお過ごしでしょうか。』
走らせた鉛筆をふと止めて
何気ない感覚をどう言葉に表そうかと考える
『私の方は、もうすぐ
秋がやってきそうです。』
なんだか違う気がする
他に何か思い付くわけでもないゆえに
鉛筆をコロコロ転がす
『私の方は、もうじき
涼しくなってきそうです。』
なんともパッとしない。
開けた窓からしぶとい夏の風が入り込んでくる
外のカエデの木がゆれて
さわさわと声が聞こえる
あっ。床に一枚の葉っぱが落ちてた
半分だけ紅くなったカエデの葉っぱ
これだ。
『私の方に、やって来た
一枚の秋を贈ります。』
向かい合う二つの顔はいつか離れていく
いつもいつまでも手を繋いでは
いられないのでしょう
いずれ、どちらかがさめてしまうから
いずれ、どちらかがきえてしまうから
いつまでも二人ではいられないなら
今あなたを愛するこの時間を
何よりも大切にしよう
たくさんの場所に行って
たくさんのことを喋って
離れてからも退屈することがないように
今日も手を繋いで歩こう。
時計の針が重なって
疲れきった顔に張り付く
白い霧
手で払いのけてはあるきだす
吐き出す重たい息が
石畳の路地裏に沈んでいった
レザーのハンチングハットの
並ぶショーケースに目がいったのは一瞬
今日の標的は目の前に
ポケットの中には
握りしめた相棒だけ
冷たい夜に少しずつ汗ばんでいく
息が上がる
誰もいないから
今、
手の中の刃が綺麗に光った
冷たいビックベンの鐘が鳴った夜
「僕と一緒に」