だから、私は一人でいたい。
友達なんていらない。
だから、私は一人でいたい。
陰から見守るなら一人が心地良い。
だから、私は一人でいたい。
あなたのよく行く店を一人で行きたい。
だから、私は一人でいたい。
あなたを陰で見ているととっても幸せなの。
あなたのよく行く店も、あなたの予定も全てわかるの。
貴方の恋人になりたい。あなたが愛する一人として。
あなたのものになりたい。あなたの1人になりたい。
『だから、一人でいたい。』
今日は家族皆で行くお祭りの日。
お祭りは沢山の人が歩き回っていて少し窮屈だ。
慣れない下駄を履き、少し埃が被っている着物を着る。
「ほらほら、早く行かなきゃ」
「ご、ごめんなっ… きゃぁっ!!」
「?早くしなさい」
「ま…まっ…て、、」
「もう先いくからねー。」
「お姉、、、ちゃっ…」
大勢の人が流れるように私の横を通る。
流れる人皆私を一瞬目にしては不思議そうな顔をしているような気がする。
「靴擦れ…うっ、痛い…」
自分の擦れた足を触っては全身に痛みが走る。
『わー!綺麗!!』
『太鼓も鳴ってるー!』
「えっ…」
少し外に耳をやると
太鼓の音
花火の音
街ゆく人の音
色んな音が聴こえた。
「、、っ…!!痛い、」
まだ歩けもしない足を少し自分に近づける。
「…綺麗……」
太鼓の音、花火の音 そしてただ 痛みだけが私の胸を圧迫する。
「もう少し頑張ってみればー?」
気だるげに言ってきたのは、僕の神様だ。
というか、女神様?なのか?
とにかく僕はこの女神とやらに付きまとわれている。
「頑張ってみればって、、そんな単純なことじゃないんですよ」
「わかってるよー!でもさ、案外気合いでどうにかなるもんよ?」
「気合い…か、、」
「そーそ!因みに私は何か頑張ってたらいつの間にか女神になってましたーー!」
クシャッと笑う笑顔とピースサインに、心が動く。
「いつの間にかって、、笑ほんと羨ましいです。」
「私が?」
「他に誰がいるんですか。
急に僕の目の前に現れたと思ったら、女神とか言い出すし。」
「えへへっ笑でも実際、見た目は女神っぽいでしょ?」
「ま、まあ。神々しさは感じられるくらいですかね」
「くらいって何よ!くらいって!」
「笑でも本当、女神だなんて未だに信じられません。というか、なんで僕に付きまとうんですか?」
「うーん…別にー?なんか暇だったから笑」
「はあ…ほんと自由ですね」
「でも僕って、別にイケメンでもないし、冴えない男って感じで…」
「まあね!」
「いや、否定してくださいよ。」
「でも、優しさと面白さはピカイチじゃないっ?」
「え?」
「漫画とかで学んでるのかな 分かんないけど
私の知らない世界を沢山教えてくれて、女神まじ感謝スマイルって感じー!」
「……何ですかそれ。」
「へへー持ちギャグー!」
「今すぐ辞めた方がいいっすよ。」
「なんでよー!!笑」
なんて言ってた日から数年が経った今、僕 いや、俺は平社員として働いている。
「ごめん3番の資料コピーしといて!」
「はい!了解です!」
「あーごめーん、この資料もお願いしていいー?」
「あー、えっとそこに置いといて頂いても大丈夫ですか!」
「先輩!これも確認お願いしますー!」
大忙しな日々に、飽き飽きとする俺。
そして今 目の前にいるのは…
「僕と 結婚してください。」
「へっ、、!?」
静かな海をバックに、キラキラと光る指輪を目の前にした女神だった。
「喜んで。」
頑張れたぜ!!俺の女神様!!!!
''ここ"の外は一体どんな世界が広がっているんだろう。
そう毎日考える私に、今日も喋りかけてくれる"あの子"。私はそんな"あの子"の期待通りの返事をする。
「おはよう」
たった4文字の会話でも、"あの子"は嬉しいみたい。
私にはよく分からないけれど、"あの子"が嬉しいなら私も嬉しい。
でも、"あの子"はあまり頻繁には私と外に行ってくれないの。
私ももう少し、外の世界を知りたい。
ずっと同じ景色で、たまに見る"あの子"の笑顔。
この風景はまるで映画の描写みたい。
"あの子"が食べているケーキも食べてみたいし
"あの子"が来ているドレスも着てみたいし
"あの子"のように自由に遊んでみたい。
私も"あの子"になれたらな。
『ピーちゃん、おはよう。』
「オハヨウ!」
『ふふ、笑今日も元気なピーちゃんで嬉しいな。』
『ほんと、ピーちゃんの"飼い主"で良かった。』
「"ゴシュジンサマ"、キョウモガンバロウ!!」
『そうだね、頑張ろっか。』
"ご主人様"と"私"は、鳥かごという檻で繋がっている。
貴方が生きてるかも分からないのに、未来に行きたいなんてよく言えるわね。
なーんてね、ちょっとした冗談よ。