「雨に佇む」
私が雨に佇むならば、グレーの傘の内側に…
リアルな雨より遥かに優しい、水気を含んだ…
紫陽花の花を咲かせよう。
誰にも見えない花。誰に、見えなくてもいい花。
グレーの傘の内側いっぱい、
吹きこぼれるように咲かせよう。
風に花びらがこぼれて、私がそれを目で追っても、
君には見えない。
でも、淋しくはないの。…私がそうしたのだから。
雨の日の薄暗い傘の中に追放された花盗人が、
盗んだ花に取り巻かれて、佇んでいる。
追放したのは君だけれど、本当のところはわからない。
私が追放されたくて、されたのかもしれないよね?
孤独にたった独り、雨の中に佇むふりをして、
傘の中に培われた幻想の花に溺れる…
君に見えている私と見えていない私の乖離があるけれど、
君は片方の私だけしか知らないままでいていい。
ちょっと意地悪な気持ちで、誰にもわからないように笑う。
「ずっと知らないままでいて、いいんだよ」って笑う。
「私の日記帳」
私は日記を書かない。書けない。
だから、日記帳もない。
何度も、日記はつけようと思った。でも、なんか違った……。
今日、こんな事があってこう思いましたって、簡単に書けばいいのにそれが、な~んか楽しくない。
萌えない。……😺。
どうやら毎日、自分の現状を記すのに興味がゼロだったらしい…。
特別楽しかったり、覚えておきたい事があったら、ノートの隅にメモする。
それが日記と言えば言えるかもしれないけど、私は「あったこと」はあんまり書かないのだ。それをすっ飛ばしてなぎ倒して、
どう感じたか、それだけをメモ書きする。
勢いにまかせるので、後から読むのに苦労するんだけど。…誤字脱字で。
しかもあったことは書かないので、文脈が行方不明になって??って思う。
多分、さあ書きましょう。と思うのも嫌なのだと思う。
その瞬間にもう書いているようでないと、気持ちが追いつかない。
だからそこら辺の広告の裏とかにも、ダーッと書いてる…。
それに、日記帳はこれだ!!っていうのを選んで買うから、気負ってしまうんだと思う…。
よそ行きの文章になって、これ誰!?ってことになったりして……「え?私もしかしたらホラ吹き?🙀」って気分になる。実にめんどうくさい…。
だから日記帳はないんだけど、ノートの買い置きはたくさんある。📒✨️
ダーッと書いてボロボロになる、「なんでもノート」なんである。
「向かい合わせ」
背中合わせより、ずっと、気まずい…
目を見ているフリして、あなたの前髪を見る。
距離近いな、よけいなこと言っちゃいそうだな、
出来るだけ黙ってようかな、不自然にならないくらいな感じに。
…いろいろ考えた後、フッと力を抜く。
考えても無駄だ。なるようになるだろう…。
心はちょっと投げやり?な方へ傾くけど、テンパってる雰囲気は変わらないだろうな。
でも、いいかって、思う。
こうやって向かい合わせであなたと話す機会なんて、もうないかも知れないし。
ずらしていた視線をあなたの目に戻す。
ああ、笑ってるのね。ありがたい。
おもしろいことなんて言えないけど、雑談出来たら○🙆
気を使ってくれてるのかもしれないけど、笑ってくれたから○🙆
ちょっと憧れてることがバレてるとしても、まぁ、いいでしょう。ぜんぶ◎🙆
うん。…悪くない感じだね。私にしては上等だよね。……ね?
「やるせない気持ち」
行き場なく、歩く。
どこにも誰にも辿り着かない思いを抱えて歩く。
はじめから辿り着かないとわかっているなら、
このやるせなさだって、持っていなくていいはずなのに。
孤立しても悲しんでも、それはいつか誰かが抱いた悲しみに似て、オリジナルなものなんて、私はなんにも持ってないのに、
人類の遠い記憶からまるで「こうやって苦しむんだよ」と強制されてるみたいに、「苦しい」は、苦しい…。
誰が…人はこうして苦しくなる。って雛形を作ったんだろう。
従わなければならないだろうか。
この、正体不明な光の、影に。
こんなにたくさんいる、人間が、
こんなにたくさん孤独を抱えている。
群生する生物なのに離れ小島みたいな心を作り出して、ひとりひとりに割り振るなんて、実に趣味が悪い。
神さまがそう創った…わけでもないだろう、と思う。それにしては効率が悪過ぎる。
そんなもんだと、OKしてきた、受け入れて引き継いで、新たに紡いだ状況が、どこかの時点で出来たなら人間サイドの責任かなぁ…。
いち抜けた、したいわ…。
「海へ」
海へ連なる川を辿って、用もないのに海へ行く。
きれいな川ってわけでもないけど、魚が跳ねて、水母も浮かんで、油断してると大きな鷺が羽を休めていたりする。
てくてく歩いて行って、やがて海が現れると、ああ海だぁ……ってやっぱり思う。
川幅というものがすこーんと無くなって、突如、空虚になるくらいの広がりに不覚にも圧倒され…
ごみごみした街の果てに、淀んだ川から来た人を、裏切るようにひろがる青に、圧倒され…
別に何の用もなくやって来て、ぼーっとして、
そして川へ戻る道を折り返して帰る。
港町名物の、お弁当とお菓子を買って、
いかにもその為に来たんですよ。という顔をして帰って、海へのお散歩、終わり。