「あいまいな空ですね。」
あなたが言うと、私はひねくれているので、
「そこが良いです。」と返す。
いつもあなたが困るようなことを言っている…かな。
(ちょっと反省しないとなぁ)
もちろん口には出さず、あなたを横目でうかがう。
(ん?)
あなたは笑っていた。
なんかおかしい流れだったかな?と思うけど、
何で笑ってるの?なんて、聞き出すのもなぁ…
私たちはあいまいに、笑ったり戸惑ったり…
あなたが優しく笑っていたから、まぁ、良しとしようか…
母は、紫陽花は枯れると醜いから嫌いだと言った。
私は、紫陽花は枯れても、美しいと思う。
私は花は買わない。
枯れても美しいから、捨て時がわからない。
母も花は求めなかった。枯れるのを見るのが嫌だったのだろう。
真逆の理由で私たちは、同じように花と関わる。
半分の空白を埋め合うように。
けれどそれは紫陽花のあずかりしらぬ事。
紫陽花は私たちには聴こえない歌を、きっと歌いながら咲いているだけ。
❁花は、今は時々、母のために供えている。
そして、バラバラになるまでそのまま。
好き嫌い。好きで嫌い。
セロリは好き。葉っぱはトゲトゲして嫌い。
でもぜんぶ食べてしまう。
炒めたら食べやすくなるし。
あなた、も、そうなのかしら?
あなたは好き。でも、こっちを向いてくれないから嫌い。
でも、ぜんぶ…ぜんぶ…ぜんぶが欲しい。
きっちりいらないところだけ捨てるなんて、出来ないよ。
私、セロリの葉っぱも食べちゃうんだし。尚更ね…
でももしも、あなたを半分捨てる事が出来たら、
私たちの間に空白が生まれて、
そこでふたりで安らいでいられるかもしれない。
いらないものは、さよなら…
見なくなれば無くなるかもしれないわ。
さっぱり捨てられたら、きっと無くなる。
でも、私があなたの半分を、怖れながら捨てるなら…
それはきっと帰って来てしまうのだろう。
あなたが私を裏切るなら、
それは私の怖れの証拠品でしかないのかもね……
「街」
私が暮らした街に雪が降る。
私が暮らした街に雨が降る。
私が暮らした街に日差しが降る。
私はもういないけれど、振り続けている。
かつて住んだ人々の声が夜空に満ちて、
重みに耐えかね落ちて来るのが、見えるみたいだ。
夜闇に銀色。
果てしなく振り続けるのは時間よりも、
心の方だ。
時間を振り払い心だけが降れば、いつか、
心の外殻は打ち壊され、弱く優しい心だけが降る。
私が暮らした街に雨が降る。
虹の雨が降る。光る雪が降る。
「やりたいこと」
やりたいことは、パッと浮かんで来ること。
たとえば、コップを洗いたい、とか。
油断してると、やりたいこともやるべきこともドバっとやって来て疲れるから、注意深く細分化する。
絵を描いてみたいなら、
スケッチブックを1冊買ってみる、
色鉛筆を引き出しから出してくる、
棒が一本あったとさ♬もとい…
一本、線を描いてみる。
これでもかと細分化するのは、けっこう楽しい。
片付けも少しずつ…
ひとつひとつのものと出会い直すのは、
思い出に直面することになるからちょっと切ないけど、
きっちり終わらせるのに成功すると、
思い残すことの無い状態に少しでも近づけて、
氣分良い。
やりたいこと。
ちょっと紙ゴミ片付ける。
段ボール縛る。
でも、そういうのもいいけど、
自分の楽しみは後回しにしないで、ちょこちょこ挟み込んでおいたほうがいいかな。
全然、わがままじゃないし。
…むしろ命綱だと思う。
コップを洗って、
スケッチブックを開いて、
洗濯機回して、
好きな本読んで、
野菜を切って、
推しの新曲聞いて、
回覧板まわして、
新しい靴を履いて、
全部平等に愛することが出来たなら、言う事ないなあって思う。
…きれいごとかな?
でも、いくらめんどうくさくてもそれが、逃げるつもりも無い大事なことなら、どうせなら楽しくやりたいって思う。
大変な時期はそれどころじゃなかったけど、
そんな時間があったから、
「あって当たり前なこと」ってないんだよなあと思う。
それがわかったんだから、無駄じゃ無かった。
だから、
…ふんぞり返って不貞腐れるのはやめとこうかなーって思った。
なんか、それだけみたい。😸。