まりあんぬ

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10/17/2022, 3:28:23 PM

それまで季節はパレードでしか知らなかった



「君が僕をどう思っているかは関係ない」

「ただ聞いて欲しい、好きなんだ」


あなたと過ごしたシュガースプーン一杯だけの夏

続きを書きたいのに書けないのは、


まだ『忘れたくても忘れられない』からなのかもしれない

10/16/2022, 7:40:46 AM

「お姫様、まもなくお別れの時間だね」

たった5秒の言葉に永遠を見た。

フランボワーズとチョコレートのケーキみたいに、絶妙な甘さや切なさをはらんだアナウンスで解った。


「凛としている」のだと。


掌の中でこちらを見ている中島健人。
その人に出会ったのは、ほんの数週間前のことだ。

流行りのアイドルグループに興味を持ち、有料サービスに登録すると、彼の特集が目に入った。

5年間休むことなく毎日ブログを更新し続けているという。

「きっかけは映画の公開に向けて『自分にできることはなんだろう』と考えた結果、初めたことだったんです。想像以上に反響がありまして。みんなが喜んでくれるなら、と続けて今に至ります」


気づいたら騒々しいバーゲン会場にいて、わけもわからず流され、邪険にされて、出口がみつからず途方に暮れる、そんな数年だった。

「いつか帰るところ」を失くした世界を変えたくて、
雨の日も風の日も寒い日も暑い日もムキになって走った。

それでも現実は、ひとつ、またひとつと崩落の一途を辿るばかりで、次第に「かなしいことが続くのは、頑張りが足りないからなんだ」なんて思い込んだ。

ときには「なんのためにこんなことをしているんだろう」と嘆いたり、そんな自分が嫌になったりして、また走って...

そんなことを繰り返している内、まじないにかかったように、夜は眠れず、食べ物の味もしなくなった。


相変わらず、鏡に映る私の脚は不細工だし、そこから意地悪な姑のように全身にケチをつけ始め、ついには「団子鼻 切らない 整形」なんて検索してしまう夜もある。

だけど、大丈夫。
自分がありたい姿がやっと微かに見えてきた気がするから。

出口がみつかるまで、試着室でポーズでも決めて、そのままニヤリとランウェイさながらに歩いてやろう。

セクシー、サンキュー。


『鋭いまなざし』

10/13/2022, 12:40:05 PM

「あなたもお母様のように、強い女性になっていくわ」

黒い建物に囲まれた路地の、まるで絵本に出てくる格子の窓から、外の世界を覗いてみると、月の光がテセレーションの石のタイルに残った雨粒に反射していた

珍しくお茶をひいて、人影も、風すらないドビュッシーな夜に
もうすぐ70を迎えるママと20を迎えたばかりの私

「母は私から解放されたくて上京させたんです」

なんて言葉を緋緞と飲み込んで

「母は第二の人生を楽しんでいて...
たまには思い出して欲しいんですよね」とお道化た私を
真っ直ぐ見つめると、曲がった背中を叩いた

「ご自分の子育てとあなた自身を心から信じているのね」

お店の中の古時計が2時を告げると、魔法が解けたみたいに
きれいなママに戻っていた


『こどものように』

10/12/2022, 6:41:56 PM

まずい。眠っている間すら、かなしいことに支配されている。

今日の起床は、まるで「水中では聞き分けられない、けれどもそこに確かにある喧騒が、水面に顔を出した途端、忙しなく自分の中に押し寄せる」感じで。

「もう起き上がらなくちゃ」と思っても、すぐさまどこからかつめたい風が吹いてきて、小雨が降るだれもいない夜の新木場駅のホームにさらわれてしまう。

遠くのスカイツリーの光が、深い水色や白色なんかにボヤけて見える。
それは灯台はおろか、まだ思い出にすらなっていなくて、目を背けたいものたちを微かに照らす。

しばらく電車は来そうにないし、私は寒さに震えてしまって、動き出せずになんとか目を閉じる。

そんなどうしようもない「はじまり」と「おわり」を繰り返して、部屋には日差しが入らなくなり、気づけばおやつの時間をまわって、近所の学校のグラウンドから部活動の声が聞こえてきた。

今日はわけもない有休で
どこにも行かないし、だれにも会わない。

みんなが「わっせ、わっせ」と世界をまわして
私だけは...... そんな水曜日。


『放課後』