まずい。眠っている間すら、かなしいことに支配されている。
今日の起床は、まるで「水中では聞き分けられない、けれどもそこに確かにある喧騒が、水面に顔を出した途端、忙しなく自分の中に押し寄せる」感じで。
「もう起き上がらなくちゃ」と思っても、すぐさまどこからかつめたい風が吹いてきて、小雨が降るだれもいない夜の新木場駅のホームにさらわれてしまう。
遠くのスカイツリーの光が、深い水色や白色なんかにボヤけて見える。
それは灯台はおろか、まだ思い出にすらなっていなくて、目を背けたいものたちを微かに照らす。
しばらく電車は来そうにないし、私は寒さに震えてしまって、動き出せずになんとか目を閉じる。
そんなどうしようもない「はじまり」と「おわり」を繰り返して、部屋には日差しが入らなくなり、気づけばおやつの時間をまわって、近所の学校のグラウンドから部活動の声が聞こえてきた。
今日はわけもない有休で
どこにも行かないし、だれにも会わない。
みんなが「わっせ、わっせ」と世界をまわして
私だけは...... そんな水曜日。
『放課後』
10/12/2022, 6:41:56 PM