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6/29/2024, 2:08:24 AM

ほんのすこしだけ離れた揺らめいていて。
それはまるで自分の未来のようだ、と感情的になるくらいまとまりつく湿度に悪態を吐いた。
ぐしゃりともらったばかりの真新しい進路希望。
《なるべく早くに書いてね》
渡されたそれがどうにも今続けていることを捨てて勉学に専念するか、今あることを続けたいならそれ相応の行動をしろと二択を迫っている。
誰かに相談しようにも結局は自分の未来。
まだそんなはっきりと決まっていないままで進学か就職かなんて。
進学なら夏期講習の予定を組み。
就職ならこのまま部活に専念できる。

『夏』が終わった後に残った時間でどれだけのことが出来るのだろう。
けれど、このまま机に向かったところで気持ちが向かう訳でもないのは分かっている。
弱音は吐きたくはないが、無性に声が聞きたくて電話をかけた。
少し長めのコール音の後に出る、簡潔な返事にすら荒んだ心を落ち着けてしまう恋人。
察しの良い彼に分からぬよう、簡単に、努めて簡単に。
進路をどう考えているのか、なんて伝えて、後悔。
彼はどういう道に行くのだろう。
ただでさえ、今も離れているのに。

「まあ、まだはっきりとは決めてませんが、あなたならどっちも選ぶんでしょう?」

応援してますよ。
電話口でたまに見せる素直な声に驚けば、一応ですからね!と重ねて言われる。
今離れていることが残念に思えるくらいの狼狽。
赤く色付いたであろう耳にキスをしたい。

6/25/2024, 2:31:42 PM

本格的に暑くなる、ひとつ手前。
梅雨時期の、僅かな晴れの平日。
会いたくて来ちゃった、と笑う目元には隠せない疲れ。
少し前なら《疲れてるなら来なきゃいいのに》なんて僕は返すのだろう。
きっと彼もそう思っていたようで。
すぐ帰るよ、と困ったように眉根が下がっている。
きゅう、とあなたと出会って存在を知った臓器が小さく鳴く。
衝動に躊躇わず、一歩半。前に。

僕もです、と小さく意思表示。
本音を言うなら、《僕も会いたかったです》と返したかったけれど、言えず、恥ずかしさから抱きついてみたりして。 
胴へと回す腕まで震えるような衝撃。
つい、と目線だけ動かせば、首はおろか、耳まで『繊細な花』のように色付いている。
さらに進めれば、口元を押さえ、何やら呟いている。
出会ってからの年月で知り得た限り、それはどうしても聞きたくて、身を捩るが同じように抱きつかれ、首すらも動かせない。
ぐりぐりと痛いくらいに肩口へ額を擦る様が、本当に今目の前にいるのだと知らせてくれる。
何を遠慮していたのだろう。
きっと似た者同士。
少しばかり先行くあなたが示してくれた通り。

恋しくなれば、会いに行けばいいだけなのに。

6/24/2024, 2:11:56 PM

社会人ともなると日々の消化に明け暮れて、物理的に離れていた学生の時の方が繋がっていたように思えて仕方がない。
忙しいのはお互い様。
便りがないのが良い便りなんて、そんなことを言えるほどまだ大人ですらない。
既読すらもすぐには付かない日も付けられない日もあって、早めに社会に呑まれていったあの人はいかに時間を作ってくれていたのかを改めて知る。
なんの取り留めもない部活での1コマ。
お昼に食べたメニューやカフェの写真。
今となってはなんであんなにも躍起になって送ったか分からないスタンプの応酬。

《起きてる?》
《電話していい?》
《今度の金曜日の夜、行くから》

《会いたい》

ともに過ごした日々を指ひとつでこんなにもすぐに振り返られるのに。
この細い細い繋がりですら、すぐに消えてしまう。
未来どころか『1年後』だって想像出来ないくらいに臆病になってしまった。
寂しいよー、と泣く猫のスタンプはあの人が送ってきたもの。
そうだ、僕も。

「……さびしい」

口してしまって、後悔。
恥も外聞もなく、ただ。
会いたいと素直に言えたなら。
そして、同じく想ってくれたなら。
ただ、それだけで。
きっと1年後も。

6/23/2024, 2:25:39 PM

『子供の頃は』
20歳なんて大人で、ひとりでなんでも出来ると思っていた。
30歳なんて更に落ち着いていて、仕事もプライベートも完璧にこなしていると思っていた。

それが今。

20歳なんて狭い学校という世界から社会に飛び出したばかり。
右も左も分からないまま、飲まれて流されて。
30歳なんてようやく仕事での目標が出来たかと思えば、プライベートは疎かで。

いつもいつも。
頭によぎるのは。

子供の頃に戻りたい。帰りたい。
たった10分でも時間を有効に使えていたあの頃に。

還りたい。

6/22/2024, 12:40:20 PM

設定したアラームのだいたい30分前に起きる。
その頃にはまだ隣には静かに寝息を立てるあなたがいて。
早起きは三文の徳だとそのままうつ伏せで寝る耳を眺める。
そのうち遠くの方で起床を告げる音に寝ていたことを知り、身動いだ頬にキスをして。
名残惜しげにベッドを抜け出す。
歯を磨き、洗い物は洗濯機に任せ、昨日のうちに用意した朝ごはんをレンジで温めながら、ケトルを沸かす。
まだ夢の中にいるのに、あなたは僕が近づいたことをに気付いて手を引かれ、再び腕の中。
緩やかな『日常』

また30分後の未来まで。

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