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ほんのすこしだけ離れた揺らめいていて。
それはまるで自分の未来のようだ、と感情的になるくらいまとまりつく湿度に悪態を吐いた。
ぐしゃりともらったばかりの真新しい進路希望。
《なるべく早くに書いてね》
渡されたそれがどうにも今続けていることを捨てて勉学に専念するか、今あることを続けたいならそれ相応の行動をしろと二択を迫っている。
誰かに相談しようにも結局は自分の未来。
まだそんなはっきりと決まっていないままで進学か就職かなんて。
進学なら夏期講習の予定を組み。
就職ならこのまま部活に専念できる。

『夏』が終わった後に残った時間でどれだけのことが出来るのだろう。
けれど、このまま机に向かったところで気持ちが向かう訳でもないのは分かっている。
弱音は吐きたくはないが、無性に声が聞きたくて電話をかけた。
少し長めのコール音の後に出る、簡潔な返事にすら荒んだ心を落ち着けてしまう恋人。
察しの良い彼に分からぬよう、簡単に、努めて簡単に。
進路をどう考えているのか、なんて伝えて、後悔。
彼はどういう道に行くのだろう。
ただでさえ、今も離れているのに。

「まあ、まだはっきりとは決めてませんが、あなたならどっちも選ぶんでしょう?」

応援してますよ。
電話口でたまに見せる素直な声に驚けば、一応ですからね!と重ねて言われる。
今離れていることが残念に思えるくらいの狼狽。
赤く色付いたであろう耳にキスをしたい。

6/29/2024, 2:08:24 AM